4月は多くの会社で人事異動があります。人事異動は、なかなか難しい課題です。
中小企業では人事課(部)という組織や機能が無い会社も多いと思います。従業員が200人を超えたくらいでようやく成立するイメージでしょうか?その際にも、人事戦略・採用・教育・評価・異動といった狭義の人事だけでなく、給与計算・社会保険、労働安全衛生、広報など人に関わるいろいろな仕事を抱えることになります。且つ、たいていの会社で担当者は2~3人と少人数です。経営者にとって、直接カネを稼がない人事課はコストセンターと考えがちです。
さて、中小企業(中堅企業)の人事異動にはいろいろな目的があります。そのなかで、現在、最も重要なのは「中高年従業員」をどう活用するのかというテーマと思います。
中小企業では65歳まで働くのは当然で、70歳を超えても多くの従業員が働いています。昨年のデータでは、従業員30人以上の企業で雇用者に占める60歳以上の割合は13%、70歳以上は2.1%です。また、定年年齢到達後に再雇用を希望する人は85.5%でした。
労働人口が減少して、雇用がなかなか難しいことから企業は従業員を手放さず、従業員の側も安定した保証を求めて会社に残ります。ここで、会社に適切な業務があり、従業員の業務遂行能力とマッチしていたら良いのですが、実際はどうでしょうか?
また、60歳定年でも40年という長期雇用だったものが、さらに伸びて50年雇用時代が見えてきました。会社が成長を続けていればよいのですが、安定成長の会社では上位のポストが増えていくわけはありません。
そうすると、業務遂行能力を高めていった若手・中堅従業員のポスト不足が深刻化します。実力を発揮するポストにつけない従業員のエンゲージメントは低下することになります。これは、会社業績の低迷につながるので打開しなければなりません。
そこで、役職定年制などを導入して中高年従業員をポストから外して、いわゆる年下上司の下で働いてもらうケースも一時期には増えました。ただ、この制度も人事課と中高年従業員の双方に覚悟がないと不満につながることから、最近は放置されてきたように見えます。
人事課の仕事が、中高年従業員の長期雇用に対応する作業環境の改善や健康管理の充実にばかり向かっているということがないでしょうか?中高年従業員を活用し、若手・中堅従業員のエンゲージメントを向上させる人事異動(配置)を徹底することは会社の業績向上に大事です。