昨年(2021年)の年初から、新電力会社の経営破綻が起こっていました。
ロシアのウクライナ侵攻によって、発電燃料価格の高騰は避けられませんから、新電力会社の経営は一層厳しくなりそうです。2016年4月の電力自由化以降、地域電力から新電力への切り替えは進んできました。2021年10月時点では、新電力のシェアは全国で21.2%と1/5を超えています。
2022年2月21日現在で、登録小売電気事業者は749事業者です。登録番号は829番までありますから、80事業者が合併や事業統合、事業撤退など何かの事情で登録を抹消しています。
昨年3月に、登録番号1番の株式会社F-Powerが負債総額464億円で倒産(会社更生法申請)しました。独立系新電力のトップの倒産は衝撃でした。
さらに、5月に新電力ベンチャーのパネイルが負債総額61億円で倒産(民事再生法申請)しました。東日本電力などパネイルの関連7社も総額29億円の負債で破産しました。
新電力会社の多くは自前の発電所を持っていません。卸電力市場で電力を買って、電力需要家に販売するわけです。その卸電力価格が原油など燃料価格の高騰で上昇しています。
グラフは2021年1月から2022年3月1日までの卸電力価格の推移です。
2020年の初めは、原油価格暴落(1バレル30ドル台)で世界が恐慌状態になっていました。その後、国際協調(産油国の減産)で原油価格が持ち直してコロナ禍でも世界経済は回復基調になりました。
2021年もその傾向は続き、景気拡大に伴って原油価格は上昇して、2021年10月には1バレル80ドル台となりました。11月には米国の主導で日本を含む主要国が備蓄原油を放出して原油価格の上昇を抑えようとしました。
今後は、ロシアのウクライナ侵攻による原油不足が予想されています。既に市場では1バレル110ドル台の値がついてきました。今後の原油価格が上昇基調になることは避けられそうにありません。
電力価格のベースは燃料価格の上昇に伴って上がっていきます。これに加えて、市場の需給バランスによって電力価格が上下します。景気回復による電力需要の増加に対して、原発を休止していることもあり電力供給に余裕がない状態が続いています。新電力の経営には不透明さが生じています。新電力から地域電力あるいは独立系新電力から地域電力系の新電力への乗り換えも増えていきます。
市場価格連動制の契約をしている需要家は電力コストの上昇の影響を受けています。新電力との契約には注意が必要です。
もちろん、契約している新電力会社が経営破綻しても電力供給が途絶えることはありません。地域電力が標準契約の条件で電力供給を続けますので、その点は心配ないです。但し、中期的には電力需給のひっ迫は懸念されます。