感染性の強いオミクロン株という変異種の出現で、新型コロナ感染症の安全配慮義務のステージが変わってきました。
労働契約法や労働安全衛生法によって、使用者は労働者に対して「安全配慮義務」(労働者の生命や身体等の安全を確保しつつ労働することができるような必要な配慮をする義務)を有しています。これには「健康配慮義務」も含まれますし、身体等はいわゆる精神や心理も含まれます。また、義務に違反した場合には損害賠償などの責任も発生します。
ざっくりと考えると、オミクロン株に置き換わって、新型コロナの毒性は1/10以下に低下し、代わりに感染性は10倍以上になっているようです。
毒性は重症者や死者の発生頻度から比較的正確に推定されますが、無症状の人が多いことから感染性はよくわかりません。濃厚接触者でなくても感染する可能性は高くなっているので、それこそ国民全部をPCR検査しない限り感染者(実際は核酸の残骸があることしかわからない)がどの程度いるかはわかりません。
感染者が多数発生して、さらに濃厚接触者がたくさん出てくるようになると、どうすればよいのでしょう。加えて、寒い季節なので例年通りに風邪のような症状を示す人は増えてきます。
事業者の安全配慮義務としては、感染者及び感染が疑われる人がいるならば、職場での感染拡大を防止する措置が必要になります。これには、該当する人に会社を休んでもらうしかないとなるかも知れません。また、労働者側から感染者がいる職場では働けないという声が上がることも考えられます。多くの事業所では、高齢で基礎疾患のある従業員もいます。
これまでの新型コロナは、風邪やインフルエンザと比較して感染力が非常に弱かったので、労働者が就業できなくなることによるトラブルは比較的限られていました。
オミクロン株に置き換わって、感染力が風邪やインフルエンザ並みに上がっているうえに、2年間のコロナ騒動の余波(社会通念の変化)を受けます。感染者や感染疑い者がたくさん出てきて、就業制限を求められるケースも増えそうです。
経団連などのガイドラインでは、●保健所、医療機関の指示に従う。●感染者の行動範囲を踏まえ、感染者の勤務場所を消毒し、同勤務場所の従業員に自宅待機させることを検討する。としかありません。
保健所や医療機関が明確な指示を出してくれるとも思えませんから、ここは経営者が労働者の意見をよく聞いて、自ら判断するしかありません。頑張りましょう!