最近の商品開発では機能を限定したシンプルな使い勝手のものが増えているようです。
現行の機種を改善改良して新しい商品を開発しようとすると、どんどん複雑になっていきます。古い旅館などで、何度も増改築を繰り返したものだから、迷路のようになっているところがよくあります。迷うのの風情だと悦に入っていたら、案外なところの段差で毛躓いて慌てたりします。
古いものを全て残して、新しいものをつけ加えるというのは、いろいろと支障があります。思い切って、切り捨てるものは切り捨てるという発想も必要です。
自社の商品にとって、何が必要なのかをシンプルに考えて、過去にとらわれずに引き算をしていくことです。何といっても商品は売れてなんぼです、売れない商品は、どんなに高品質でも、どんなに高い原価を掛けていてもダメです。
小学校の算数では「さくらんぼ計算」というのを習います。
15から7を引くときに、15を10と5に分けます。その分けた様子が、さくらんぼの2つの実のように見えます。10のほうから7を引いて3として、3と5を足して8という計算方法です。
何となく、まどろっかしい感じもしますが、これは結構合理的です。足して10になる組合せ、1と9・2と8・3と7・4と6・5と5を覚えておけばいいというわけです。もちろん、さくらんぼ計算には人それぞれの流儀があります。引く方の7を5と2に分けて、15から5を引いて10、さらに2を引いて8としても構いません。
各社でこういうセオリーを見つけて使っていると効率的なように思います。
商品開発をするとき、自社の評価で15点の商品の機能を10点の機能と5点の機能に分けてみます。5点の機能を捨てたうえで、10点の機能をブラッシュアップさせて2点を差し引いて8点の商品を開発します。この8点の商品の方が、顧客の評価が元の15点の商品より高くなることはよくあります。
少し話が違うのですが、私の元の会社は素材をつくる会社ですが、その素材が情報記録に使われることで情報産業と関わりができました。当時のお客様には、有機化学系の会社がたくさんありました。例えば、フロッピーディスクは帝人・花王・三菱化成などが有力なプレイヤーでした。有望と思われた情報記録分野に各社は参入していたわけです。
しかし、これらの会社は2000年を前にして情報記録分野から撤退しました。個人的な感想ですが、そのとき速やかに、綺麗に撤退した会社ほど、その後の発展を遂げているように感じています。