何にも例外はありますが、総じて言えば、日本の工業製品は日本以外の国と比較して品質が高くなっています。
このため、欧米先進国でもアジア諸国でも、日本製品は強い競争力を持っています。アメリカで日本製品の不買運動が起こり始めたのは、私たちが働き始めた頃でした。ダンピングなどと言いがかりもつけましたが、品質においても「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は恐怖の対象でした。当時のフランス政府などは、露骨に日本製品を流入を妨げようとしましたが、徒労に終わりました。
日本メーカーの絶え間ない努力で、現在もこの状況はあまり変わっていません。最近の韓国政府の試みが失敗していることでもわかります。
日本の製造業の国際的な強さが、実に40年以上も続いているのです。日本以降の新興工業国がなかなか抜くことができません。これは、歴史上でも、前例がない驚異的なことです。
なぜ、日本製品の品質が高いかですが、生産者が高品質なものを勝手につくっているわけではありません。日本製品の高品質の背景には、高品質なものを好んで選択するという国内需要の存在があります。これは日本人の性質としか言いようがないです。
1000年以上前に建てられた神社仏閣や仏像などを見てみますと、極めて精緻につくられています。歴史の古さを誇ることができる世界のあらゆる文明でも、これほどのものは残せてはいません。アジアでもヨーロッパでも、その当時の文物は、遠くから見ればそれなりに綺麗ですが、近寄ってみればかなり雑な印象です。
但し、いくら需要があっても、それに応えているのは、ものづくりに携わっている技術者であり技能者です。これらの人の、好奇心や競争心、向上心がものづくりの技術を高めていくのです。では、その好奇心・競争心・向上心の源泉は何でしょうか?
実は、それが日本人の共同体意識だと思います。
日本人が目立つことを嫌い、同調を好み、個性を尊重せず、多様性を認め難いという性質はネガティブに評価されることが多いでしょう。
しかし、周りと横並びにおりたいという意欲は、言い換えれば負けたくないということですから、強い学びの意欲になります。そして、横に並んだら、「ほんの少しだけ」前に出たいと思うのです。
この「ほんの少しだけ」が大事なことです。「出る杭は打たれるが、出過ぎた杭は打たれない」という金言がありましたが、出過ぎた杭は周りの杭に伸びる意欲を失わせます。
誰かの好奇心が功を奏して、ほんの少し前に出る。横並び意識の強い日本人は、それに追いつこうとする。そして、また誰かの競争心が何かをみつけて、ほんの少し前に出る。こういう終わりのない改善こそが、日本人の特性だと思います。