PCR検査は万能ではない~厚労省報告書より

新型コロナ感染症は、無症状の場合が多く、症状があっても特徴的な症状がないので、診断がつきません。そこで、PCR陽性の人を感染者=患者と数えます。

 

PCR検査が神のようにあがめられているのですが、検査(測定とか計量)の結果には、誤差があります。誤差のない検査はありません。ところが、PCR検査は、どんなに誤った結果であっても、誰にも判定ができません。何しろ、新型コロナ感染症は確定診断ができないのですから・・。摩訶不思議でしょ。

 

「新型コロナウイルス感染症のPCR 検査等にかかる精度管理調査業務」報告書(2021年4月)から、抜粋します。私が知る限りで、PCR検査の実態についての初めての報告です。

 

調査は2020年11月に実施されています。日本には、現在ではPCR検査をしている施設が2万4千あります。昨年11月時点はもう少し少ないかも知れません。そのなかから600の施設を調査することにして参加事業所を公募しています。結果として563施設が調査の対象になっています。ランダムサンプリングではないので、おそらくは平均より優良な施設の状況です。

 

調査機関の日当り受託件数
調査機関の日当り受託件数

563施設の施設カテゴリ―は、多い順に、医療機関 310、行政機関 128 施設、衛生検査所 107、大学施設臨時衛生検査所以外 11 施設、その他 7 施設であった。

 

受託件数(1日)は、10 件未満 32.0%、11-50 件34.5%、51-100 件 13.9%、101-200 件 7.6%、201-500 件 3.0%、501-1000 件 2.1%であった。

 

【抜粋】

測定者資格は、遺伝子関連検査の専門資格は、18.8%で、その他は多様であった。

 

薬事承認状況は、装置で未取得は40.3%、試薬で未取得は41.2%であった。

導入時の妥当性確認・検証項目は、精度(再現性)、検出限界・分析感度について 50-60%の実施率と低かった。

ルーチンの測定回数は、1回測定が 71.8%、2回測定が27.5%であった。

内部精度管理自体は全ての施設で行われていたものの、統計学的な許容範囲を定めた上での内部精度管理を実施している施設は少ない可能性が示唆された。

精度確保の方法について、標準作業書を自ら作成しているのは49.9%であった。標準作業書の未作成の施設では、メーカー取扱説明書を利用していると考えられた。

 

要約すると、専門資格を持っている人が測定しているのは1/5未満、4割の施設は薬事法の承認を得ていない装置や試薬を使っている。半分の施設は妥当性確認をしておらず、測定は1回だけ、内部精度管理を実施している施設は少ない。標準作業書を作成しているのも半分ほどで、メーカーの取説を使っている。

 

厚労省の調査に、自ら参加を申し出た施設で、この状況です。これ以外の施設については、情報がありませんから、何とも言えませんが、より高度な管理をしているとは思えません。

 

測定の判定結果
測定の判定結果

この調査では、2種類6試料セットを各施設に送付して、判定をしてもらっています。

当然ながら、各施設は通常より念入りに準備をして、最も信頼できる技師を使って検査して、正確な判定を心がけたと思います。

 

その結果、陽性の試料④を陰性と判定したのが2.1%(4/192)、同じく陽性の試料⑤3を陰性と判定したのが3.6%、陰性の試料⑥を陽性と判定したのが0.6%でした。

検査精度としては、めちゃめちゃ高くなっています。さすがに大したものです。

 

しかし、このように準備されたサンプルを慎重に測定しても、誤判定は出るのです。

例えば、東京都で全て陰性の10,000人のPCR検査をすれば、最高レベルの検査をしても60人の擬陽性が出るのです。

 

日常のPCR検査では、サンプリングもいい加減ですし、その後のサンプルの取扱いも杜撰です。検査施設も大量の検査をするなかでは、測定者、装置、試薬の全てにおいて最高レベルを維持することは困難でしょう。

 

東京都の感染者が100人を下回らなければ、緊急事態宣言を解除できないと医師会会長は言っています。言葉を変えれば、緊急事態宣言の解除なんか、絶対にしないということです。


この報告書の結語です。まぁ、最高レベルの施設でも検査とはこういうものです。

 

おわりに

新型コロナウイルス感染症の PCR 法等の核酸検査は、様々な施設において、異なる機器・試薬・手技によって行われており、その精度確保への取り組みは、測定結果の信頼性を左右する。その実態は、本事業において、精度管理実態調査と外部精度管理調査の集計の詳細な分析と評価に基づき明らかとなった。また、本報告書において、今回の調査にて明らかとなった精度の確保における実態に基づき留意すべき点についても記述した。

本調査において見られた測定結果の誤判定報告は、成績良好であった参加施設においても日常検査で起きうる事象である。また、誤判定に至らないまでも、定性結果の再現性不良や定量的指標における外れ値を示した施設も少なからず認められた。

各検査実施機関においては、本報告書の内容に基づき作成された「精度管理マニュアル」を参考にし、継続的な検査の精度の確保のもとで、正しい検査結果の提供に努めていただきたい。