パラダイムとは、基本的な考え方とか仕組みのことです。16世紀のヨーロッパでは、天動説から地動説へとパラダイムがシフトしました。
世界の保健医療分野では、20世紀最後の四半世紀を端緒として、劇的なパラダイムシフトがおこったとされています。医療とは疾病を治療するものというパラダイムから、老いても健やかに尊厳がある人生を最後まで全うするというパラダイムへの転換です。
☞ (参考)保健・医療パラダイムシフト推進協議会
1947年に採択されたWHO憲章の前文で「健康」は次のように定義されています。
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいう。」
健康・病気の捉え方が、WHOの定義のように、人という生物の機能を基準とするものから、社会や生活の質に基礎を置くものへと、本質的に変わるには、時間が必要でした。
身体的に健康であるのみならず、精神的にも社会的にも健康な「全人的健康」へのパラダイムシフトは、1980年前後に起きたとされています。
1998年のWHO執行理事会では、「spiritual(霊的)とdynamic(動的)」を加えた新しい健康の定義も検討(WHO総会で採択されなかった)されてもいます。
21世紀の保健医療のパラダイムは、「客観的健康から主観的健康へ」「死亡か生存かから、生活や人生の質へ」「疾病中心から健康中心へ」「静的・状態観念としての健康から、動的・能力観念としての健康へ」という大きな変化があったわけです。
危険要因(例えば、コロナウイルス)の軽減や除去をめざすだけではなく、健康要因 (例えば、一無二少三多)を支援して強化します。
具体的には、「処置から癒しへ」「患者から健康課題がある全ての人へ」「病院・施設からコミュニティーへ」「治療・医療から生活習慣の改善へ」「医師が決めるから市民が決めるへ、患者の自律性の尊重、自己決定へ」「指導から学習へ」「西洋医学一辺倒から多元多面的なケアへ」といった転換でした。
コロナ騒動で、保健医療のパラダイムが半世紀の先祖返りをしました。天動説へ逆戻りしたわけです。マスコミは”イノチ”という言葉を大安売りします。政治家は票集めのためにデマを垂れ流します。感染症の専門家や医師は科学的な評価を放棄して煽ります。
パラダイムの再転換には、かなりの時間がかかりそうです。