中村吉右衛門さんが体調を崩したというニュースです。上演中の歌舞伎座「楼門五三桐」の石川五右衛門役は、甥の松本幸四郎さんが代役を務めます。
歌舞伎を観る機会はないので、吉右衛門さんと言えばテレビの鬼平犯科帳の平蔵や武蔵坊弁慶のイメージが強いです。派手やかな、明るいイメージの役者さんだろうと思います。歌舞伎界のなかでも、けれん味がある役者さんの一人と思います。
さて、「けれん」とか「けれん味」とは何でしょうか。
歌舞伎用語辞典によると以下です。
外連【けれん】と書く場合もある。
大道具や小道具の仕掛けを使って、観客の意表をついたり驚かせるような演出のことを指す。早替りや宙乗り、葛籠抜けなどが、その例。
「けれん」は人をびっくりさせるような演出のことですから、いい意味でも悪い意味でも使われるようです。歌舞伎の場合は、けれんやけれん味は、本来重要な要素ですからいい意味で使われることが多いでしょう。
一方で、けれん味のない演出という場合は、奇をてらわないオーソドックスなものということで、これもいい意味で使われるようです。
「けれん」という言葉が使われる際は、けれんがあっても無くてもよい意味のようで、少し使い方が難しいように思います。
わたしたちにとっては、「ケレン」というと、塗装の素地処理のほうが身近です。
主に鉄部に生じた錆びや付着汚れを落したりして被塗装面を清浄にする作業のことです。
英語のクリーン(Clean)に由来するといわれます。ちょっと、驚く。
ケレンには1種ケレンから4種ケレンまで4つのグレードがあります。
1種ケレンは、ブラスト法(鉄粉や砂粉などを高圧で吹き付ける方法)により、黒皮、赤さび、旧塗膜を完全に除去し、清浄な金属面を露出させます。
2種ケレンは、ワイヤーブラシや電動工具を用い、赤さび・旧塗膜を除去し、鋼面を露出させます。黒皮までは完全に除去できません。
3種ケレンでは、赤さびや劣化塗膜など(死膜)を除去し、鋼面を露出させますが保護膜として機能している旧塗膜(活膜)は残します。
4種ケレンでは、白亜化で生じた粉化物やその他汚れを軽く除去します。清掃ケレンともいいます。
塗装の素地処理は、出来栄えに大きな影響があります。仕様書通りにきっちりおこなうことが基本です。