全ての食品事業者は6月1日から「HACCPに沿った衛生管理」に取組む義務があります。
HACCPは、食品事業者が危害要因(ハザード)を分析し、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらを除去または低減させるために特に重要な工程を管理することにより、製品の安全性を確保するという衛生管理の手法です。食品衛生法の改正は昨年(2020年)6月1日に施行され、1年の経過措置を経て今年の6月1日に完全施行されます。
食品衛生管理の見える化というのなかで「水分活性」が注目されています。測定器が結構売れているそうです。
水分活性というのは、「自由水÷全体の水」で求められます。食品の表面にある自由水の割合のことです。
自由水の反対は束縛水です。例えば、塩分とか糖分があると、水は塩や糖と弱く結合して束縛されます。
微生物が繁殖するには、自由水が存在しなければなりません。逆に言えば、自由水の割合を減らせば繁殖を抑えられます。
大腸菌は水分活性0.95以下では生育しません。それ以外の多くの細菌は0.90以下では生育しません。しかし、黄色ブドウ球菌などは0.85以上であれば増殖します。
カビの多くは0.80以下では増殖しませんが、耐乾燥性の特殊なカビは0.70くらいでも増殖します。カビが最も乾燥に強い微生物です。
水分活性を 0.50 以下に抑えれば,あらゆる微生物の増殖を防ぐことが可能です。
新鮮な肉や魚、野菜や果物の水分活性は0.95以上なので、保存性が低いのはみんな知っています。早く食べちゃいましょう。
水分活性を下げる方法は、先ずは乾燥させることです。干し肉、干し魚、乾燥野菜、ドライフルーツなどは長持ちします。さらに、燻製などいぶすと食品の表面に膜をつくって水分活性がさらにさがります。かつおぶしやビーフジャーキーなどです。
次に、塩で自由水を束縛することもできます。梅干し、漬け物、塩鮭などです。また、砂糖で自由水を束縛することもあります。ジャムやマーマレード、果物のシロップ漬けなどです。
水分活性を低く抑えれば、微生物の増殖を抑えることができます。食品の賞味期限を延長することにつながります。また、水分活性を正確に知れば、食品にどんな微生物が増殖するかが予測できます。予測に基づいて、保存料の種類や量を調整(減量)することもできます。
※宇部市にある山口県産業技術センターの水分活性測定装置は1時間420円で使えます。