水処理膜の閉塞は死骸でおこる

排水処理では、一般に活性汚泥法という微生物を使った浄化をおこないます。

 

活性汚泥というには、何千種類の微生物を含んだ集合体です。微生物は、曝気(空気を吹き込むこと)された処理槽のなかで、排水中の有機物を食べて増殖します。増殖した微生物は、さらに大きな塊になるので、沈降しやすくなり、分離もしやすくなります。

 

膜分離活性汚泥法(MBR)
膜分離活性汚泥法(MBR)

従来は、増殖した微生物を凝集剤などで集めて、沈殿させることで分離していました。

この方法は簡単なのですが、重力で沈殿させるので時間がかかり、広い沈殿池が必要です。

また、どうしても沈殿しきれない微生物が残るので、最後に精密ろ過(砂ろ過など)の処理が必要でした。

 

そこで、近年では沈殿池の代わりに膜を使って増殖した微生物を分離する「膜分離活性汚泥法(MBR)」が開発されて、一般に広く普及しています。

この膜分離法は、当に日本の化学+エンジニアリング事業者にとって、お家芸ともいえるものです。非常にきれいな処理水を、省スペースで得ることが可能なので、途上国を含めて、世界中で大いに役立っています。

 

この膜分離法で困るのは、膜が閉塞することです。長い時間使っていると、目詰まりを起こすというのは当然のようですが、逆洗浄など目詰まりしないような処置をするので、微生物の塊そのもので目詰まりしているのではありません。目詰まりさせるのは、いわゆるヌメリです。家庭の台所やお風呂場でも見ることがあると思います。

このヌメリは物理的に剥がすことが難しいので、殺菌材(次亜塩素酸など)などで化学的に除去します。これも家庭と同じです。

 

ヌメリとは何か?ですが、何かの個体(膜とか台所の排水孔とか)に微生物の集合体がとどまると、その細胞から何かの高分子物質をつくるようです。

ここから、ちょっとややこしいのですが、水処理膜が閉塞するのは、このヌメリを食べにくる微生物がいるからだそうです。このヌメリを好む微生物はドンドン食べて、結局死ぬまで食べ続けるのです。この結果、微生物の死骸が溜まって、膜を閉塞させることになります。

 

コロナ禍のステイホームでも、じっとして、食べ続けるのは危険です。<関係ないか>