日本の政策に国内の学術成果がどれくらい反映されているのだろうか。少し気になります。
新型コロナウイルス感染症に関する政策は、専門家会議やアドバイザリーボードで審議されます。その結果は政策文書として公開されるのですが、少し眺めた範囲では学術論文を引用している例は少ないように感じます。引用している場合も、最近では変異種の構造のように、直接的には政策と関わらないような論文が多いように思います。
サイエンスweb版、1月8日に、コロナ感染症に関わって提出された世界各国の政策文書に学術論文がどのように引用されているかを分析した記事が掲載されていました。
但し、分析できているのは、昨年の5月までのデータです。
新興感染症による危機という医学部門の変化に対しての政策ですから、学術の出番です。
医療関連の論文を引用しているケースが多く、そのなかでも2020年に発表された論文が多くなっています。
一般医療雑誌・専門医療雑誌ともに利用されていますが、査読済みの論文を政策に引用しているケースが多くなっています。また、逆に政策に引用された論文は、繰り返し引用されているようです。
グラフは政策文書に引用されている論文の分野別のシェアを表したものです。
新型コロナウイルス感染症が登場した当初の2020年1月は、医療分野の論文がほぼ100%となっていました。その後、社会分野と経済分野の論文引用が増えてきています。
5月の時点では、医療:社会:経済=5:3:2のシェアになっています。
その後のシェアがどう変わっているかは、よくわかりません。
医療分野では直近の研究が論文になったものが使われるのは、新興感染症ですから当然です。一方で、社会や経済の分野では、必ずしも新しい研究成果に限らないと思います。
いずれにしても、日本の論文で引用されているものは非常に少ないと感じます。日本の政策を決めるのですから、海外の論文ではなく、国内の研究成果を基礎において欲しいものです。
学術会議の委員選びで話題になりましたが、国の政策に活かされるような学術であることが望まれます。何となくの印象で、違っていたら申し訳ないのですが、日本の学術の成果が国の政策にしっかり反映されていないのではと危惧します。