不死の薬を燃やしたから富士山~かぐや姫のお話~

竹取物語のエピローグです。帝は武士を大勢連れて、かぐや姫が残していった不死薬を焼くために、天に最も近いとされる山へ登ります。その山は「ふじの山」と名づけられました。

 

かぐや姫の物語のメインテーマが「不死」というものです。

かぐや姫は「月」からやってきました。「月」は満ち欠けを繰り返しながら、決して無く(亡く)なりません。昔の人にとって、永遠の生、不老不死の存在としてロマンを感じる存在でした。一方で、月の神秘な光は、地上の人々の生を奪い取るようにも見える少し不気味なものでもありました。

 

竹取物語 貼交屏風(立教大学蔵)
竹取物語 貼交屏風(立教大学蔵)

もう一つの重要なアイテムが「竹」です。

竹もまた、神秘的な植物です。1日に1m以上も伸びることがあるほど成長が早いのですが、太ることはありません。

地上の竹が朽ちても、地下茎で結ばれている竹はまたすぐに生えてきます。「竹」もまた、永遠の生を得ているかのように見える存在でした。

このため、古来から、竹は地上界と異界を結ぶものと考えられていたようです。

 

さて、お話は最後に飛んで、かぐや姫は月へと帰っていきます。

 

そのとき、愛する帝と翁に残すのが「不老不死」の薬です。実は、月の世界が不老不死なのはクスリのお陰だったというわけです。そして、そのクスリは地上の人にも効果があるというのです。ちょっと、ビックリするような話ではないですか?

 

ところが、地上の人々はこの不死の薬を焼き払ってしまいます。

地上の人にとって、懸命に生きること、ときには病に苦しむこと、徐々に老いること、そして別れを悲しむこと、いろいろな辛さを乗り越えて暮らすことこそが、人を人としているものだと分かっていたのでしょう。

 

平安時代、今から1150年くらい前につくられた物語です。