省エネセミナーで「新型コロナ感染症対策と省エネの両立」という演題でお話ししました。
新型コロナ感染症対策として、推奨されているのが「新しい生活様式」です。基本は、密を避けて分散して活動をするということです。現在は、そもそものところで、社会の活動レベルが下がっているので、エネルギー消費も減っています。しかし、活動レベルが戻ってくれば、新しい生活様式ではエネルギー消費が増加してしまいます。
省エネをするというのは、エネルギーの消費を減らすということもあるのですが、エネルギーを効率的に使うということでもあります。
新しい生活様式で推奨される、分散はエネルギー効率を下げることになります。
10年ほど前に、省エネを目的として、テレワーク・在宅勤務を拡大させようという議論がありました。
実際に試算してみると、テレワークによって省エネになりました。
何故、省エネになるかと言えば、オフィスでのエネルギー消費が大幅に減るのに対して、増える家庭でのエネルギー消費がそれほどでもないという理屈です。
簡単に言えば、オフィススペースが大幅に減るという想定でした。
しかし、コロナ禍で密集を避けるという理由で、オフィススペースそのものは減りそうにありません。今、都心部などでオフィス面積を減らしている企業は、テレワークの導入よりも、コロナ禍による業績不振からリストラを余儀なくされている企業です。
オフィススペースを効率的に使えるということで、流行していたフリースペース化も、感染リスクを高めるということで回避されるようになってきました。
寒くなってきて、暖房のシーズンになります。
人の密度が下がって広々としたオフィスで、ウイルス対策として換気量をどんどん上げて、加湿器をじゃんじゃん回せば、どうなるかは明らかです。
対策としては、換気量と加湿量を適切にコントロールすることが大事です。
1時間当たりの換気回数2回、二酸化炭素濃度1000ppmを目安に過剰な換気をしないこと。
室内で人が執務する範囲の湿度も40%を目途にして、過剰な加湿をしないこと。
可能な場合は、全熱交換機(換気はするが熱は逃がさない)を導入すること。
ウイルスによる感染リスクを減らすのが目的です。どこまで行っても、リスクはゼロにはなりませんが、閾値というのがあります。
例えば、加湿の例では、湿度が低い乾燥した状態ではウイルス生存率が高く、感染のリスクは高くなります。これはコロナウイルスに限った話ではありません。
しかし、湿度をどんどん高くしていけばよいというものではなく、概ね湿度40%を超えれば、70%でも90%でもウイルス生存率に差異がありません。むしろ、湿度が70%以上になれば、細菌の生存には有利になって増えてきます。違う疾病のリスクが高まりそうです。
どうやら、好むと好まざるを問わず、ウィズコロナを強いられそうな雰囲気です。そうであれば、持続的な省エネとの両立も必要です。
オフィスに1台、炭酸ガス濃度計を買って置きましょう。炭酸ガス濃度計には、たいてい温度と湿度も表示されます。この数値をみながら、換気量や加湿量を調整してみてください。