官僚制より効率の高い組織はない

昨日の続きです。会社の生産性向上では、数十人以上の規模であれば、官僚制を前提にして進めることが効果的です。

 

よく、会社では報連相(ホウレン草)をしっかりしなさいと言われます。上司が命令・指示をして、部下が報告します。部下が連絡したら、上司は判断します。部下が相談すれば、上司は援助します。階層的で標準的(言葉を変えれば前例踏襲)な、活動のことを官僚制と言います。

 

会社の組織
会社の組織

官僚制が効果を生むのは、役職という権威に基づいた支配があるからです。

上位の役職者が必ずしも優秀であるとは限りません。また、会社のなかで異動もありますし、中途採用の例もありますから、必ずしも経験豊富というわけでもありません。

 

しかし、それでも上位の役職者が命令・指示をして判断をするのです。いろいろな考えを巡らして、あ~でもない、こ~でもないと悩んでいては仕事は進みません。

 

また、自分が判断を求める上位の役職者が一人に限られるのも大事です。「ワンマン・ワンボス」です。

係長は、自分の課の課長の指示に従うのです。他の課の課長が指示することはないでしょうが、部長が(もしかしたら社長が)課長を通り越して指示を出すことは、たまにあります。しかし、仮に部長の指示でも素直に聞いてはいけません。そんなことをすれば、組織は混乱します。また、経験上、そういうときの部長や社長の指示には、”抜け”や”欠け”があるものです。

 

つまり、効率のよい組織というのは、必然的に縦割りになるのです。「縦割り行政」の打破や「政治主導」というのは、組織を混乱させて、官僚制の効率を落とすことになります。それでも、改革が必要であると言われるのは、官僚制の逆機能を呼ばれる弊害があるからです。

 

1968年にアメリカの社会学者マートンが、システムには「順機能」と「逆機能」があると指摘しました。官僚制の逆機能とは次のようなものです。

 

「訓練された無能力」・・規則があることや、過去に前例があることには正確に対応できる。だが、想定外の事象が起きると、標準を超えることができず、むしろ無能力になる。

 「目的の転移」・・目的の達成のため規則がつくられる。だが、規則の順守が目的の達成より優先され,目的となっていく。

「過同調」・・規則から逸脱する意思決定が回避される。

「 文書主義」・・文書がなければ手続きが進行しない。文書を作ることが仕事になる。

「セクショナリズム」・・安定的な関係の職場の場合は、自己の保身と所属部署の利益だけに目が行く。

 

さて、結論です。結局のところは、バランスです。

現代日本の行政のように、大量の仕事を効率的に処理していかなければならない場合、官僚制以上に優れた組織はありません。何でもかんでも、官僚制を打破し、縦割り行政を否定しては国民生活が成り立たないのです。一方で、官僚制には弊害もあります。改めるところがあるのは、間違いはありません。なかなか難しい問題です。

 

但し、一般人が、「縦割打破!」は全て正義だと思うようになると、たいへん危険なことになります。万一、政治家の発言に悪乗りして、マスコミや専門家、コメンテーターが煽りまくるようになると、要注意です。