これは、昔のことですね。今の日本の会社では、次の社長を自分だけの意向で決めることのできる社長は、結構少ないと思います。
安倍晋三首相が、持病の潰瘍性大腸炎が悪化したことから、急に辞任することになりました。夕方の記者会見の一部をラジオで聞きました。安倍首相はかなり疲れているような印象です。歴代最長となる7年8か月の期間、日本の舵取りを担ってきたわけですから、もう無理はしないでいただければと思います。それにしても、記者たちの質問レベルが低いのには唖然としました。記者会見の機会が少なかったと批判するなら、他に尋ねることがあるだろうになぁ?
さて、潰瘍性大腸炎は”難病”です。
日本では、①発病の機構が不明、②治療方法が不確立、③希少な疾患、④長期療養を要する、の4条件を満たすものが難病と定義されています。
国は、現時点で、333の病気を「指定難病」としており、医療費助成の対象としています。
尚、「指定難病」という言い方は2015年の難病法施行以降で、それまでは「特定疾患」と言われていました。
潰瘍性大腸炎は平成30年のデータで12万5千人が登録されており、指定難病のなかではパーキンソン病に次いで患者数の多い病気です。患者数が少なければ、治療方法が見つけにくくて「難病」となるわけですから、患者数が多いのは悪いことではないです。ちなみに、新型コロナのPCR検査陽性者数が6万5千人です。
「指定難病」では、平成30年末時点で12の病気に患者がゼロです。患者が国内に1人だけの病気が17あります。患者が10人以下の病気は92、100人以下では205です。これらの病気の治療方法を研究するのは極めて難しいです。
さて、表題に書いたように、以前は「社長の最大の仕事は次の社長を決めること」と言われていました。安倍首相の、次の日本国の総理大臣を誰が務めるのかは、混とんとしています。その点では、安倍首相は、最大の仕事を完成させていないとも言えます。
しかし、最近の企業では、次の社長を決めることのできた社長は稀です。社長室に呼ばれて「次は君に決めたよ」と言い渡されるのは、日経の”私の履歴書”のなか、昔のことです。
さらに、最近では前社長が決めた社長が、成功を収めた例は、もっと希少です。それどころか、自分で決めた社長を自分で引きずりおろして、再び自分が社長に返り咲くような不細工な例が、無闇に目につきます。
”安倍一強”と言われたところで、自由と民主主義の国である日本では、トップの力は限定的です。それは、政府も会社も同じです。
アメリカでも中国でも、海外の国のトップが関心を持つステークホルダーは均質で、数も限られます。日本の首相は、あらゆる国民の、あらゆる考え方(どれほど少数でも、異質でも)に関心を持ち、配慮をしなければなりません。その結果として、仮に”一強”と言われても、何も決められない政治となるのです。
社長も同じです。海外の企業であれば、関心を持つべきステークホルダーは株主だけです。
仮に、会社の業績が悪くなったとき、海外の社長が考えるのは、どうやって株主に配当を維持するかだけです。ところが、日本の社長は従業員の雇用を守ることを、株主配当よりも優先しなければなりません。
安倍首相も、第二次政権の中盤までは、自分で次の社長を決める(育てる)ことに意欲を持っていたように思います。ところが、最近はあまり考えなくなったように見えます。今日の記者会見でも、次の総理総裁については自分は関わらないと答えました。
一般企業と日本のような大国の政府を一緒にしてはいけませんが、次のトップは自然の流れのなかで、考えがまとまっていって、決まるのがよいでしょう。能力のある人、実力のある人、またそれを高められる人は、相当の数いるはずです。
後は、地位が人を育てると、割り切ることかと思います。