レバノンの首都、ベイルート中心部に近い港湾地区の倉庫で発生した爆発では、死者100人以上、負傷者5000人以上という大惨事になっています。
爆発の原因は、港湾倉庫に保管されていた硝酸アンモニウム(硝安)によるものです。報道によれば、その量は2750トンという膨大なものです。倉庫で何かの工事をおこなっていて、溶接か溶断の火が着火源となって大爆発へ至ったということです。
「前車の覆るは後車の戒め」、この機会に危険物保管の点検をおこないましょう。
硝酸アンモニウム(硝安)は、肥料,火薬原料,硝酸塩原料,ペニシリンの培養,冷却剤、などに使用されます。圧倒的に多いのは、肥料用です。日本でも、年間3~4万トンは製造されていると思います。
さて、硝酸アンモニウム(硝安)は日本の消防法では「危険物 第1類:酸化性固体」に分類されています。危険等級Ⅱで、指定数量は300㎏です。
「酸化性固体」は、そのもの自体は燃焼しないのですが、反応する相手を酸化させる性質を持った固体です。可燃物と混合すると、熱・衝撃・摩擦などによって分解して、激しい燃焼(爆発)を起こさせる危険があります。
つまり、可燃物と隔離されているのであれば、それ自体は危険ではありません。ここが、ポイントで、指定数量を超えて貯蔵しているようなケースを見逃しているかも知れません。点検をしてみましょう。
硝安による爆発事故は近年多発しているように思います。
2015年8月12日の中国・天津での爆発事故では、死者行方不明者173人、負傷者798人とされています。この爆発は、倉庫に保管してあったニトロセルロースが発火源となって、硝安の爆轟に至ったものです。保管されていた硝安の量は800トンでした。
2014年4月には、アメリカ・テキサス州の肥料倉庫で、貯蔵されていた硝安30トンによる爆発事故が発生しています。死者15人、負傷者260人です。木造の倉庫で発生した火災によるものです。
少し遡ると、2001年9月にフランス・トゥールーズ市の肥料工場で、死者31人、負傷者4,400名という爆発事故がありました。硝安300トンを貯蔵した倉庫で火災が発生し、爆轟に転移したものです。
この機会に、工場、農場、倉庫内を点検して回りましょう。もしかしたら、放置されたままの危険物が見つかるかもしれません。尚、硝安は指定数量300㎏ですから、その1/5、60㎏以上で少量危険物として法規制の対象になります。