6月は環境月間です。日曜日に、「アラル海消失」の記事を連載します。最終回です。
世界4位の広さ、瀬戸内海より多くの水を湛えていたアラル海が、わずか60年ほどで、ほとんど消滅しました。もし、瀬戸内海に水が無くなったら、私たちの生活がどう変わるか?想像することさえ難しいでしょう。アラル海の再生に向けて、連載の最終回です。
2001年に世界銀行のプロジェクトが発足して以来、アラル海(北アラル海)の再生に向けての活動が少しづつおこなわれています。
しかし、現状が満足できるものには、至っていません。
中央アジア5か国には、それぞれの政治的な事情があります。それも、それぞれが深刻な問題を抱えています。
アラル海再生に関する思惑も、それぞれの国で異なり、新たな格差や分断の種にもなっています。
カザフスタンは外交・防衛でロシアの影響を強く受けます。キルギスとタジキスタンもロシアの影響下にありますが、国境を接する中国との関係も微妙です。しかも、アラル海に流れ込む2つの大河、シルダリア川とアムダリア川もその源流は中国(新疆ウイグル自治区)にあります。ウズベキスタンは近年経済発展が著しく日本との経済交流も盛んになっています。イランとアフガニスタンの2国と国境を接するトルクメニスタンは鎖国に近い政策をとっています。
中央アジアには地下資源など、未開発な資源が眠っています。ロシアや中国に加えて、アメリカやEUも、いろいろな関係を模索しています。
結果として、アラル海の再生プロジェクトは、なかなか統一された思惑で行われていません。
それでも、北アラル海(小アラル海)の漁獲高は徐々に増加しています。
1950年代の最盛期に、年間5万トンだった漁獲量は、1991年には50トンになっていましたが、現在では年間8000トンほどに戻ってきました。
一方の、南アラル海(大アラル海)の現状はかなり悲観的です。
また、北アラル海の漁業も持続可能性が高いとは、未だ言える状況ではなく、模索が続いています。現在の漁獲は、耐塩性のカレイが主で、それほど高値で売れません。事業として継続できるには、スズキやコイなど汽水域で獲れる魚種が必要です。
アラル海の消失は、人為的におこされた環境破壊です。人間の手で復旧できないはずは無いものと思います。しかし、あまりにも大規模な破壊です。壊すのは30年でできましたが、元に戻すには、その何倍の期間が必要になりそうです。
この課題は、中央アジア5か国だけでなく、国際社会が連帯して、取り組む難事業だと思います。日本がこのプロジェクトを推進する役割を、果たしていけることを期待しています。
【追加】ロシアではシベリアの森林火災という大きな問題も起こっています。6月25日のニュースでは、シベリアのサハ共和国で50カ所で森林火災が発生しており、これまでに64万haが焼失したそうです。これだけでも、山口県の面積より広いのですが、実際はこの数倍の森林が消失しているという報道もあります。
何しろ、スケールが大きすぎて、我々にはピンとこないです。地球環境を変えてしまうような事件や事故が、起こり続けているということです。