ロシアの北極圏・北緯69度にある都市ノリリスクで、火力発電所の燃料タンクが倒壊して、2万kLを超える燃料油が流出しました。油は、シベリアの河川を広範囲に汚染しています。
流出した油の量が膨大なことに驚きます。2万kL以上の油流出事故は、エクソン・バルディーズ号事故(4.2万kL)など船舶ではありましたが、陸上施設からの流出量としては信じられません。一体、何をしていたのだろうか?大いに不思議です。なんと、この原因が永久凍土の融解による地盤そのものの崩壊だったということです。
一昨日のニュースで、シベリアの北緯67度にあるベルホヤンスクと言う町で気温が38℃になったと流れました。世界で最も寒く、最低気温はマイナス65℃を下回るような町です。
さて、永久凍土は数万~数千年前に形成されて、アラスカ、カナダ、ロシアをまたぐ北極圏に広がっています。深さが数メートルから数百メートルに及ぶ氷の岩盤です。
地球温暖化の影響を受けて、この永久凍土が各地で融解しています。シベリアでは永久凍土のうえに、いろいろな建造物があるために、今後も被害が予想されます。今回の事件ではプーチン大統領が非常事態宣言を出しましたが、本格的な対策をとらないと、また起こりそうです。
恐ろしいことに、永久凍土のなかには多量のメタンなどの温室効果ガスが閉じ込められています。その総量は、大気中の炭素の2倍になるということです。つまり、温暖化の進行によって永久凍土が融解すれば、さらに地球温暖化は加速するということになります。
さらに、永久凍土の中にはウイルスや細菌が、意図しないで凍結保存されているといわれます。2016年に北シベリアで炭疽病が集団発生しました。70年前に埋められた炭疽菌に感染したトナカイの死骸が、永久凍土の融解により露出して、感染を拡散したと判明しています。
多くの病原体が、永久凍土のなかで静かに眠っています。これには、よいこと(?)もあって、スペイン風邪ウイルスの遺伝子配列が解明できたのは、その当時にスペイン風邪で亡くなり永久凍土に埋葬されていた遺体を掘り起こして解析することができたからだそうです。
永久凍土の中からは、古くは30万年もさかのぼるようなウイルスが、何種類も発見されています。人類の誕生以前のウイルスですから、人が感染する可能性は低いでしょうが、新たな病気の原因になるかも知れません。ウイルスの薬剤耐性遺伝子も永久凍土から見つかっています。
永久凍土の融解は、温室効果ガスだけではなく、人類にいろいろな禍をもたらす懸念があります。パンドラの箱は開けないままにしておきたいものです。