今日は、プレジデントオンラインで怪しい記事を目にしました。『「統計上はコロナではないが…」東京の4月死亡者数は例年より1000人以上多い、累計のコロナ死者は120人なのに…』
今年4月の東京都の死亡者数は1万107人で、過去5年間の平均に比べて1058人多かった。なぜ例年より死者が多かったのか。「新型コロナによる肺炎などの死亡だったのに、PCR検査が不十分だったため、コロナ陽性と判定されない死亡が多かったのではないか」という解説です。統計でウソをつく方法の典型的な手法です。
上の二つの図表を見るとどうでしょうか?あたかも、東京都では4月に例年より多くの人が亡くなっている。これは、実はコロナウイルスの感染が隠れて広がっているのだ。東京都は、小池知事はそれを隠しているのだ!と思いかけますよね?
人は数字になると、すぐ騙されるのです。統計的に・・と、言われるとイチコロです。
突っ込みどころはたくさんあるのですが、わかりやすく、月別死亡者数の5年平均というところです。平均値は一番よく使う統計値ですが、どんなときでも使えるでしょうか?
下のグラフを見てください。
東京の月別死者数の推移をグラフにしてみました。一目瞭然ですが、東京都では毎年亡くなる人の数が増えていっていることがわかります。こういう風に、傾向的に数字が変化しているときに平均を使うことが適当でないことはすぐわかりますよね。
私が現在の体重を過去5年間の平均体重と比較することには意味がありますが、10歳の子が過去5年間(5歳から9歳まで)の体重の平均値と比較して、今の体重が増えているからといって、太った!と悩んでも仕方ないです。
東京都では毎年人が流入するので人口が増えています。また、高齢者人口も年々増えていますから、死亡者数が増えていくのは当然です。
そこで、正確ではないのですが、過去10年の傾向通りに死亡者数が変化すると仮定して予想される死亡者数と、実際の死亡者数の差を超過死亡としてみたのが、下の図です。
この計算でも、確かに2020年4月は600人を超える超過死亡が出ています。
しかし、2019年5月には1270人、同じく1月は750人、2018年7月は650人と超過死亡は出現しています。2020年4月が突出して多いわけではなさそうです。あまり心配しないでも、よさそうです。
さて、2020年4月に戻りますが、このグラフをみて気づくのが2019年11月から2020年2月までの死亡者数が逆にとても少ないことです。ニュースにするなら、こちらでしょう。
つまり、今年の冬に亡くなる人が例年に比較して記録的に少なかったのです。ちょっと調べてみると、これは全国的な傾向でした。
もう、わかりますよね? そうです。去年から今年の冬は、記録的な暖冬(気象庁の統計によると、これまでで最も気温が高く、且つ最も降雪量が少ない冬だった)だったのです。
まぁ、軽はずみなことは言えませんが、2020年4月の超過死亡というのは、この冬を乗り切れた高齢者と関係があるかも知れません。
☞ 「統計上はコロナではないが…」東京の4月死亡者数は例年より1000人以上多い(プレジデントオンライン 2020/06/15)