山口県では、今年も各地で蛍が乱舞しています。
山口県では、山口市の”一の坂川”、下関市豊田の”木屋川(こやがわ)”と長門市湯本の”音信川(おとずれがわ)”のゲンジボタルが国の天然記念物に指定されています。これらの川に限らず、県内の各地で蛍が見頃です。アウトドアで密になりませんから、皆さん蛍見物に出かけてみてください。
山口県で主にみられるのはゲンジボタルですが、山陽小野田市の竜王山周辺では山麓から頂上までヒメボタルの乱舞を見ることもできます。
ゲンジボタルは日本の固有種です。このため、各地で天然記念物に指定されています。ほたるのなかでは、大型で1.5㎝ほどになります。
ヘイケボタルは大陸や朝鮮半島にも生息しており、ゲンジボタルより小型です。
ゲンジボタルとヘイケボタルは、ともに水生です。ゲンジボタルはきれいな流れの川に棲み、ヘイケボタルは水田など流れのないところにも棲みます。
実は、水生のホタルというのは珍しいのだそうです。日本でみられるホタルは40種類ほどあるそうですが、ほとんどはヒメホタルのように陸生です。
ゲンジボタルとヘイケボタルは対になっているので、源平合戦を思いおこさせます。平家終焉の地である山口県でゲンジボタルが乱舞するのもむべなるかなと感じます。
しかし、ゲンジボタルは源平合戦とは関係ないそうです。ゲンジボタルの名前の由来には諸説あります。紫式部の源氏物語が由来という説や、夜に光って自らをアピールすることから”顕示虫”から転じたという説があります。民俗学者の柳田國男は”験師(山伏のこと)蛍”がもともとだと言っています。
一方の蛍(ホタル)は、ホは火のことで、”火垂る”あるいは”火照る”から転じたものというのが定説です。
清少納言の枕草子です。
『夏は夜。 月のころはさらなり。 やみもなほ、ほたるの多く飛びちがひたる。 また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。 雨など降るもをかし。』
蛍は乱舞するだけでなく、ほんの一匹か二匹が、ちょっと光って飛んでいくのも趣深いと言っています。何となく連想して、『鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす』などと色っぽいことも思い浮かびます。
しかし、唐代の歴史書「晋書」にある、『夏月則練囊盛数十蛍火、以照書、以夜継日焉(夏になると練り絹の袋に数十匹の蛍を入れて、その明かりで書物を照らし、夜暗くなっても学ぶことをやめない)』のほうが新型コロナの新しい日常に向いていますかね?