まことに不可解な緊急事態宣言です。別の世界のことを見ているような気がします。
国民の多くは緊急事態だとは本気では認識していません。しかし、そんなことを言うと大変です。テレビでコメンテーターやタレント医者の皆さんが「未知のウイルスだから怖い」と煽ります。政府も国民もこれに乗っていかないといけません。それにしても、いったいいつまで未知なんだろう。まぁ、それは置いといて政府の緊急経済対策についてです。
緊急経済対策については、コメンテーター、タレント学者の皆さんは、より早く・より大規模にお金をばら撒けと煽ります。確かに、コロナ本体よりも経済のほうが緊急事態のように映りますから、政府も乗っていかないわけにはいきません。結果として102兆円規模の経済対策をすると発表しました。
それでも、政府のほうはのらりくらりと時間稼ぎをしているように見えます。国民のイライラが沸騰しないように少額でもインパクトがある政策は打ち出すのですが、大きな金額の政策はゆっくりとおこないます。
日本は世界で最も裕福でお金持ちの国です。例えば、対外純資産でも342兆円もあります。
日本の国富(正味資産)は3,457兆円もあります。しかし、この正味資産の75%超は家計が所有しており、2,623兆円にもなります。政府の正味資産は30兆円しかありません。
政府の財政余裕度でみると、日本より余裕がないのはイタリアくらいです。世界の赤字を一手に引き受けているアメリカのほうが、政府の懐によほど余裕があります。
下の表・グラフを参照してください。
今回のコロナ禍でもわかるように日本では世界のどの国よりも私権の制限ができません。良くも悪くも、世界一の民主主義国家です。政治家は「生活第一」「家計優先」でなければ選挙に勝てません。そして、政府にお金がないのです。
政府に30兆円しか財産がないのに100兆円の費えをするには、国民からお金を借りることになります。今でも1,000兆円近く借りているので更に100兆円増えるだけです。
金は天下の回り物ですから、家計から100兆円が政府に回り、その100兆円がまた家計と個人事業主を含む法人企業のうち苦しいところに回るわけです。家計には100兆円の債権が増え、政府は100兆円の債務が残ります。政府は今でも500兆円の債務超過ですから、それが600兆円になるだけです。・・・と、ケセラセラともいかないのです。
日本全体としてみればお金がどこにあるか、というだけに見えます。しかし、どこにあるかでお金の働きが異なります。リーマンショックなどの金融恐慌の場合は、確かに家計や民間にお金を移動させることは効果があったのですが、感染症の場合はどうでしょうか?
どうも政府の手元にできるだけお金をたくさん置いておくほうがよさそうです。感染症対策として経済を止める政策をおこなっている最中に、家計や民間にお金を回してもお金は働かないです。感染症が収まって経済が回り始めてから、お金を投入すればお金が生き生きと働きます。この辺りのタイミングをとらなければなりません。
もう一つの懸念が自然災害です。震度6以上の地震は昨年6月の山形沖地震から10か月起きていません。地震はいつ起こるかわかりません。また、暖かくなって風水害の季節がやってきました。昨年のように集中豪雨が連続するようなことがないとも限りません。
その際の備えとしても、財政をあまり傷めないようしておくことは大事です。
ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)です。今日さえ乗り切れれば明日はなんとか・・と考えるのは本当の施政者でも経営者でもないのです。