新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、中国政府・中国経済は試練に立たされています。
昨年(2019年)、中国の経済成長率は6.1%でした。日本の2019年GDP成長率(実質)が0.7%ですから、比較すれば大変高い成長率です。日中の差は広がるばかりです。一方で、中国の6.1%という成長率は29年ぶりの低水準であり、成長の勢いが鈍ってきていることも事実です。そこに、感染症問題も影響する可能性があります。
日本の経済成長率の長期推移が上のグラフです。太平洋戦争での敗戦の後復興を果たし、高度経済成長期に入った日本の経済成長率は平均9.1%でした。早くも1969年には戦勝国を追い抜いてアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国になっています。
その後、1973年のオイルショックによる大きな落ち込みを経験した日本は、多くの外的要因特に円高と日米貿易摩擦にうまく対処して安定成長期に入ります。その頃に経済成長率は平均4.2%という水準です。
日本経済が最も繁栄していた時代は、1980年代の後半だったと思います。この時代に、円高に対処するため、日本は中国をはじめ東アジアへの直接投資を大幅に増やしていきます。
繁栄の後にもたらされたのがバブルであり、バブル崩壊です。1990年代以降の日本経済は長期停滞期に入り、経済成長率の平均は1.0%です。この時期に、日本の生産年齢人口がピークを越えて減少に転じていることも大きな要因です。
さて、中国経済の先行きです。2011年に日本を抜いて世界第2位の経済大国という地位を得た中国です。その後も経済発展は著しく、近い将来にアメリカを抜いて世界1位の地位を得ることは確実と思われてきました。
中国は日本の10倍、世界第一の人口を誇る国ですが、生産年齢人口は2010年にピークを越えて既に減少に転じています。それでも中国の経済成長が鈍っていかなかったのは厖大な農村人口が背後にいたからです。三農(農業・農村・農民)問題への取り組みが中国経済の発展と政治の安定には重要です。
新型感染症によって、2億人の農民が都市へ戻れずに足止めされているという報道がありました。都市住民と農民の格差は、民主化のコストを先延ばしにしている共産党政権にとって必ずコントロールしなければならない課題です。引き続き、注目です。