ウイルスは病原微生物ではなく非生物

連日のウイルス報道ですが、ウイルスというのは細菌より小さいけど生物だと思っていましたが、非生物(生物ではない)だそうです。ハテナ?

 

ウイルスには、栄養を取り込むという機能がない。エネルギーをつくる(高校で習ったATPサイクル)機能もない。タンパク質を生合成することも出来ない。単独では増殖することができない。したがって、生物ではないということです。

 

新型コロナウイルス
新型コロナウイルス

細菌は単独増殖するので生物(原核生物)です。病気を引き起こすものでは寄生虫ももちろん生物(真核生物)です。

 

ウイルスは生物ではないということですから、有機化学物質(の集合したもの)ということになります。化学物質なのですが、宿主である生物との相互作用によって増殖することがあります。この相互作用をおこなうことが感染です。

 

したがって、ウイルスには相互作用をおこなうことができる宿主が必要ということになります。人間が宿主になっているウイルスも知られているだけでの何百もあります。人間の風邪の原因になるウイルスは200種類ほどだそうですが、そのうちの4種類がコロナウィルスです。

 

問題なのは人間以外の動物(哺乳類に限らない)が宿主となっているウイルスです。

動物を宿主とするほとんどのウイルスは人間を(人間も)宿主にすることはないのですが、稀に人間にも感染するウイルスがあるのです。最も有名なのが1997年の鳥由来のインフルエンザで、2004年のSARSはコウモリが由来の新型肺炎です。2009年の新型インフルエンザは豚由来でした。

 

インフルエンザに限らず、人間の感染症の75%はもともとは動物由来だということがわかっているそうです。人間と動物の接点が多くなるほど、動物由来の新型感染症が増えることになります。ここで、注意するのは、この場合の動物は生きた動物に限られます。

 

武漢の市場の映像では、生きたままの動物を食用にするために販売していました。これが問題です。日本などでは、魚介類を除けば生きたままの食材を買うことは少ないので、このルートの感染はあまり考えられません。肉屋さんで売っているお肉にウィルスがいることはないのです。

 

しかし、日本では動物由来の感染症の可能性がないかというと違いそうです。愛玩動物(ペット)として、生きた動物を身近で飼っている人はむしろ日本や欧米など先進国で多いかも知れません。もちろん、一般に買われている犬や猫は大丈夫と思いますが、変わったペットを愛好する人や極端にペットを溺愛する人もいます。

 

話は少し変わりますが、地球上ではアフリカ、アジアなどで、まだまだ人口が増えていきます。このため、畜産振興による食料増産がなければ飢餓人口が増えることになります。

ところが、畜産資源の20%が家畜伝染病(これは人には感染しません)で失われてるという現実があります。これに加えて、動物由来の新型感染症のリスクも高まっているわけです。

 

アジアに位置する先進国である日本としては、新興国との協力のために獣医学の拡充と進歩が欠かせません。人間への感染症拡大を防ぎ、家畜同士の伝染病の拡散も防がなければなりません。ところが、加計学園問題で明らかになったように、日本の獣医学は質も量も不足しています。今回の新型コロナウィルスをきかっけにして、このあたりの改善にもしっかりと取り組みたいところです。