日本における火災の特徴は、世界的に見て出火件数は少ないのですが、死亡者数が多いこと。
日本の平成30年の出火総件数は3万8千件ほどで、死者数は1,427人でした。諸外国と比較すると、米国は175万5千件(死者 4,246人)、中国は18万件(死者 3,021人)、英国は39万1千件(605人)、ドイツ18万8千件(406人)と報告されています。統計の取り方が同じではないかも知れませんが、日本は火事で亡くなる方が多いようです。
ホテルや旅館は多くの人が寝泊まりします。しかし、初めての利用する人が多く、建物の構造や避難経路を知っている人は稀です。このため、夜間に火事になった場合など、効率的な避難をすることができず、逃げ遅れて死亡するという懸念があります。
また、ホテルや旅館は当初の建築から改築や増築を繰り返すことが多く、連結部分で段差ができていたり、鉄筋鉄骨と木造部分が連結されていたりします。耐火構造の部分とそうではないところが混在している状況は危険が増します。
また、特に旅館の場合では調度品に防火や耐火ではないものが大量に使われていることもあります。古い(伝統的な)ソファーやカーテンなどには、火が付けば盛大に燃えるものや、有害ガスを放出するものもあります。宿泊施設は整理整頓が意外に苦手で、避難階段などに荷物が置いてあって、避難を妨げたケースも数多くあります。
一方で、ホテルや旅館を規制をする自治体や消防などの側の監視体制は脆弱です。
新築や増改築の許可を出すのは都道府県ですが、詳細なチェックができるだけの人材は確保されていません。これを非難することは容易ですが、詳細なチェックができるだけの陣容を整えるなら、行政コストはとんでもないことになります。
また、行政のチェックでは「疑わしいからストップ!」とはなかなかできません。事業者が長い時間の検討を経て、無理をして資金を集めて、命がけで事業化に取り組んでいるようなケースが大半です。建築許可を不許可にするには、よほどの確信が必要です。
結局のところ、ホテル・旅館を経営している事業者本人が見て回るしかありません。季節柄、大きな火災など起きないか心配しています。しっかり確認しましょう。