BCP(事業継続計画)をつくる際に、不測の災害時に備えておくべき備品は何かと考えます。
水・食料・紙コップ・カセットコンロ・ラジオ・懐中電灯・・・・などなどです。たくさんの備品が必要でお金がかかるような気がしますが、実は改めて購入するようなものはほとんどありません。「災害対応備品リスト」は、それがどこにあるかを記入しておくリストだと考えたほうがよいです。
ある電気工事業の会社でBCP策定を手伝いました。電気工事業では、「災害対応用品」は全て自前で揃っています。
ヘルメットや手袋・マスクなどの保護具、ペンチにハンマーなどの工具、ブルーシートに養生テープ、簡易トイレに発電機まであります。照明は懐中電灯なんてものではなく、道路工事用の行灯です。
まぁ、ここまで極端なのはともかくですが、たいていの中小企業ではその職種によって必要な備品を備えています。それが、そのまま災害時にも転用できますから、新たに購入するものはほとんどありません。
万一の場合に、何が転用できるかを考えることが大切です。
そこで、飲用水についてです。人は水を飲まないと死んじゃいます。
その工場では、災害のために飲用水を準備することにしました。一人1日3リットルの水が必要だから、従業員50人の工場で3日分450リットル。ペットボトル(2リットル入り)を225本購入しようという計画です。この通りにしても構いませんがお金(2万円くらい?)もかかりますし、保管する(1パレット分?)のもたいへんです。
ところが、工場内には2台の自動販売機がありました。停電になると購入できませんが、業者に話して予め鍵を借りておけば、非常時に使うことができます。自動販売機には、水だけではなくてお茶やコーヒー、ジュースもあります。人は水を飲まないといけないのではなく、正確には水分を摂らないといけないので、これでOKです。また、料理をするのに水が無くてもジュースで煮炊きすれば味はともかく、食べることはできます。カップラーメンをお茶でつくっても食べられます。
ところで、工場にバッテリー用の精製水がたくさんありました。これも水ですから飲むことができます。精製水や蒸留水など純粋な水を飲むとお腹を壊すとか、倒れてしまうとかの都市伝説がありますが、それは嘘です。
空気中には不純物がたくさんありますし、コップなどの容器も汚染されています。そもそも人の皮膚1㎠あたり10万個くらいの菌が棲んでいます。純粋な水は研究機関の高度なクリーンルーム内でしか飲めません。
そうそう、水は電気を通すから濡れた体では感電事故にご用心というのは、後段の「感電事故にご用心」は正しいですが、前段「水は電気を通す」は間違いです。純粋な水は電気を通しません。水はいろいろな不純物をすぐに溶かし込むので、この不純物が電気を通すのです。