ラグビーW杯決勝で南アフリカに敗れたイングランドが銀メダルをすぐに外したといいます。
ノーサイドの精神やスポーツマンシップとしてもいかがなものかと、少々批判されています。しかし、銀メダルよりも金メダルの方をどうしても獲得したいという思いは、純粋で隠すことができないものです。長い年月の間、たくさんの犠牲を払って決勝の舞台に辿り着いたのですから、仕方ないかと思います。というわけで、金銀銅メダルのお話です。
金と銀と銅はいずれも第11族元素です。周期律表では縦に並んでいます。金と銀と銅は姉妹元素(姉妹金属)というわけです。
同族の元素は価電子数が同じで、それぞれの化学的性質は似ていています。第11族元素は化学変化を受けにくいという点で共通しています。
この性質があるため、金銀銅は世界中で昔から貨幣として広く使われており、貨幣元素と呼ばれます。
クラーク数というのは、元素が大陸地殻に存在する割合を示したものです。最もクラーク数が大きい=つまりたくさんある元素は酸素(O)です。46.4%を占めます。
金(Au)のクラーク数は0.004ppm、銀(Ag)は0.07ppm、銅(Cu)は55ppmです。金は銀の1/17.5しか存在しないくらい希少で、銅は銀の785倍も豊富にあります。金と銅では1万4千倍になります。金はあまり存在しないので大変に貴重です。
金も銀も今年の中頃以降は、価格が高騰しています。金の価格は6000円/gを目指す勢いですが、銀は高騰しているといっても70円/g程度です。この価格の差が金の希少性を表します。
金を黄金(こがね)、銀を白銀(しろがね)、銅を赤銅(あかがね)と言います。金の黄金の輝きは、人々の心を惹きつけます。太陽の輝きを連想させる黄金は権力の象徴であり、魔力を持っています。古来、支配者・権力者は黄金の装飾を好み、人々は憧れました。
みんながみんな金メダルを獲得できません。金メダルは希少であり、何かの運命によって選ばれた人にしか与えられません。頂点を目指してきた選手にとって、自らの希少性を保証するメダルの色は重要です。1番じゃなくてはならないのです。銀でもメダルが獲れたからよいじゃないか、というわけにはいきませんね。