このところのニュースで、農家の方が台風による被害が甚大で生活できなくて大変だ、としばしば報道されますが、実態はちょっと違います。
そもそも、農業経営では自然災害によるリスクが大きいものです。このリスクに対処するために、国(農水省)では農業保険(収入保険)という制度があります。この保険は公的保険で保険料の半分は国が補助します。今回の台風などでも、収入は確保できる制度です。
農業保険の仕組みは右の図のようになっています。詳しいことは農水省のWebサイトを参照してください。
簡単に説明します。(細かいところは、正確ではありませんので悪しからず。)
最初に、過去5年間の平均収入を「基準収入」とします。仮に就農から間が無くて5年の実績が無い場合には、最低1年の実績があれば、それを基準収入とします。
この収入は、所得ではなくて、農業による売上高のことです。
以下は、基準収入が1000万円であり、台風の被害などでその年の収入が半分の500万円まで減ったという場合で示します。(収入が減少する理由は基本として関係ありません。)
農業保険は保険方式と積立方式の2階建てです。
先ずは保険方式の方からです。
保険でカバーされる保証限度額が基準収入の80%、支払率90%の場合です。
保険料は2%なので、1000万円×80%×90%×2%=14.4万円です。この保険料は半額が国の補助があるので、農業者の負担は7.2万円になります。但し、この保険は掛け捨てです。
この保険によって、基準収入の80%である800万円と実際の収入500万円の差額300万円の90%、つまり270万円が補償されます。
次に積立方式ですが、限度額が10%です。支払率90%の場合、1000万円×10%×90%=90万円を積み立てるわけです。但し、この積立金の75%を国が補助しますので、農業者が実際に積み立てるのは22.5万円になります。
この積立によって、90万円が補償されます。これは積立金なので、取り崩さなければ翌年以降もそのまま残りますから、再度積み立てが必要ではありません。
結果として、1000万円の収入が500万円+270万円+90万円=860万円となります。
仮に、壊滅的な被害を受けて農業収入がゼロ(こんなことはないでしょうが)になったとすれば、ゼロ円+720万円+90万円=810万円となります。
かなり、手厚い保険制度ができています。ニュースを視ている農業と関わりの薄い一般の方は、農業と保険がつながりにくいのだと思います。きちんとした農業者は、意外に大丈夫なのです。