10月1日の新聞に「東芝メモリが”キオクシア”に社名を変更」と1面広告が掲載されました。
大手では、ヤフーが持株会社に移行して”Zホールディングス”になり、興銀リースが”みずほリース”に、ソフトバンク・テクノロジーは”SBテクノロジー”、ソネット・メディア・ネットワークスは”SMN”に、など社名を変える企業はたくさんあります。上場企業では、毎年2~3%の割合で社名を変えています。
東芝の前身は明治時代に創業者田中久重のもと「田中製作所」として出発した強電の会社です。田中家が経営から退いたことから「芝浦製作所」に最初の社名変更をします。
昭和になって弱電メーカーの「東京電気株式会社」を吸収合併したことから「東京芝浦電気株式会社」に社名を変更しました。そして、1984年に「株式会社東芝」に社名変更して現在に至ります。
社名変更で有名且つ成功したのは、「東京通信工業」から「ソニー」、「株式会社壽屋」から「サントリー」、「大阪金属工業」から「ダイキン」、「理研光学工業」から「リコー」などが比較的古い例です。
「東洋工業」が「マツダ」、「東洋曹達工業」が「東ソー」、「日本合成ゴム」が「JSR」、「東洋陶器」が「TOTO」、「伊奈製陶」は「INAX」・・きりがありません。
社名変更にはいろいろな理由があるのですが、ブランド価値を高める(ときによっては、ブランド価値を守る)というのが基本的な目的です。合併したり新規事業を開発した場合は社名で新規事業を直接認知してもらうことができます。これまでの会社のイメージを刷新して、新しいイメージを顧客に持ってもらうには社名変更は有効です。
また、社名が古くから変わることない老舗企業では、会社を示すブランドが既に確立しようとしている場合もあります。そのブランド名に社名を変更することで、統一感が出て従業員のモチベーションも上がりそうです。
問題は、社名変更の効果をどうやって把握するかです。実は、社名変更もタダでできるわけだはありません。看板を掛け替えるとか、名刺や帳票を印刷するとか、情報システムの更新、会社のロゴの更新などなど、どうしても必要なコストがかなり発生します。
「松下電器」が「パナソニック」に社名変更した際のコストが約250億円だったという話です。工場をひとつ建てるくらいの金額ですから、投資効率の試算は大事です。
また、多くはないのですが社名変更の失敗例もあります。実例は差し控えますが、老舗企業同士の合併で、全く新しい造語のカタカナ社名した会社などは、ブランドが浸透しないで営業には支障が出ているようです。
社名変更は取り返しのできない経営のオプションです。意外に高額な投資が必要ですので、慎重に検討したいところです。