建物の省エネ性を左右する要素として断熱材を何にするかは重要な要素です。
断熱性能だけを比較するなら、ウレタンフォームなどプラスチック系の断熱材が優れています。しかし、プラスチック系のものは、原料が石油ですし、製造するのにエネルギーを使う(温室効果ガスを放出する)ので本当に省エネかという議論があります。ソーラーパネル(の材料)をつくるのに電力を大量に使うというのと同じ話です。
製造するのにエネルギーをあまり使わないのは、セルロースファイバーなどの自然系の材料です。
ところが、プラスチック系も自然系も防火性が低いという欠点があります。一軒家であれば少し緩和されますが、ビルや集合住宅では防火性は重要です。
防火性となると、ロックウールやグラスウールのような鉱物繊維系の素材が有利です。
また、床や壁の断熱材には防蟻性も求められるのでその点でも鉱物繊維系は有利です。
一方で、建物のなかには人が活動するので健康性能も大事です。この分野では自然系の材料が優ります。但し、一般的に自然系の材料はコストが高くなります。
尚、かつてグラスウールには発癌性があるという情報が広まったことがありますが、IARCの分類でグループ3(ヒト発癌性に分類できない)でコーヒーや緑茶と同じカテゴリーです。安心してください。ちなみに、アルコール飲料やたばこはグループ1(発癌性がある)です。
というわけで、断熱材を選ぶのはたいへんです。
そのなかで、自然系の吹込みセルロースファイバー施工が一般化してきました。新聞古紙に難燃剤のホウ酸と接着剤を混ぜて粉砕し、綿状にしたものです。リサイクル材なのでエコです。
パネルを貼り付けるのではなく、現場で吹込み施工をします。
水蒸気の保湿・吸湿性が高いので、健康性が高く、結露も起こりにくいです。さらに、断熱性能に加えて、防音(遮音)性能が高いことも特徴です。コストは鉱物系よりは少々高いのですが、ドイツや北欧では定番の断熱材(断熱工法)になっています。