農林水産省の発表によると、農作業中の死亡事故が1年間で304件(平成29年)もあります。
昭和49年(今から45年前)の死者445人をピークにして、少しづつ減ってきていますが、この10年間でも300人を下回ったことはありません。昭和49年と平成29年では農業従事者数が1/4になっているので、従事者当りの死亡率は3倍にもなっています。建設業や重工業での労働安全水準が飛躍的に向上しているなか、由々しき問題です。
農作業中の死亡事故をみると、高齢者が多いという顕著な傾向があります。
65 歳以上の方が死亡した事故が 256 人(84.2%)、80 歳以上の高齢者による死亡事故が 128 人(42.1%)です。
最近は、工場でも高齢者の入構を許容するようになってきていますが、それでも80歳以上の作業者を許可することはありません。宇部市のある工場では、65歳以上だと入構前の健康チェック(血圧測定など)が義務付けられています。
死亡事故の原因では、農業機械作業での事故が全体の7割を占めて圧倒的です。
特に、乗用型トラクターが3割を占めるなど、大型の農業機械による事故が多くなっています。
農業従事者の高齢化は、農業の機械化・農業機械の大型化につながるようです。
具体的な事故としては、農業機械の転落・転倒が最も多くなっています。農道の路肩は不安定なところが多いので、運転操作を誤って転落・転倒するようなケースでしょうか。
また、いわゆる交通事故のような農業機械と自動車の衝突事故も起きています。
高齢者による自動車事故が社会問題化してサポートカーの義務化が議論されています。農業機械でもサポートカーのニーズが強まっているようです。
とはいえ、安全は誰かに与えられるものではなく、自分でつくるものです。「安全なくして生産なし」は工場だけのスローガンではなく、農業でも同じです。安全技術を農業技術の中核技術の一つと考えなければいけません。
尚、熱中症による死亡も22人に上っています。今日は、意外なほど涼しい一日でしたが、これからどんどん暑くなります。熱中症対策にも配慮してください。高齢になると、自分の身体の異変に気づかなくなってきます。