2013年に久しぶりに韓国に行ったら、空港の売店で持参した韓国紙幣が使えませんでした。
韓国では2006年から2009年に掛けて、新しい紙幣が発行されていました。それまでは1万ウォンが最高貨幣でしたが、5万ウォン札が新たにできました。旧紙幣が無効になっているわけではなく、街の銀行で新紙幣と交換してもらって使えます。
韓国の5万ウォン札には、申師任堂という女性の肖像が使われています。
申が姓、師任堂が名です。
師任堂は、16世紀の李氏朝鮮時代の書画家です。山水・葡萄・草・虫などの絵画、漢詩などの分野で優れた作品を残しました。
7人の子供がおり、教育に熱心であったことから「良妻賢母」の象徴ともされています。
そして、驚くことに息子の一人である儒学者の栗谷李珥が5千ウォン札の肖像となっています。調べてみないとわかりませんが、紙幣の肖像で親子共演というのはかなり珍しいような気がします。
韓国で最高紙幣に女性が使われているのはちょっと意外ですよね。少なからず男尊女卑のイメージがある国です。実際、ウォン紙幣で女性の肖像が使われたのは、申師任堂が初めてでした。
日本の紙幣でも1万円札は聖徳太子から福沢諭吉、そして渋沢栄一となるので男性です。5千円札の樋口一葉でようやく女性が登場して、次の津田梅子へと続くと思っていました。
ところが、明治14年に発行された日本最初の紙幣の肖像が神功皇后なので女性でした。
調べてみると、日本の紙幣に描かれた人物は現在流通している紙幣までで合計で17人です。
女性は神功皇后と樋口一葉の二人だけです。細かくいうと、2千円札の裏面に紫式部がちょっと描かれてはいます。男性は日本武尊から野口英世まで15人です。
紙幣となった神功皇后の肖像ですが、何となく日本人離れしていてハイカラな感じです。神功皇后は仲哀天皇の后です。2世紀から3世紀にかけて、ギリギリ実在が確認できるかできないかという人物です。もちろん、肖像が残っているわけではありません。
明治の初めの日本には紙幣の肖像を彫る技術者はおりませんので、ドイツ人のキヨッソーネという彫刻家が彫刻しました。当時の印刷局で働いていた女性職員のなかから適当な数人を選んでデッサンをして、その顔を神功皇后としたそうです。
このため、ちょっとドイツ人と日本人のハーフのようなお顔になったようです。この肖像は、可愛らしくて人気があったそうです。