日本の社会は欧米に比べて硬直化していて、起業し難いという誤解を持つ人がいます。
日本の開業率は4~5%で推移している。欧米諸国ではドイツの7%前後が低く、最も高い英国は14%を超える水準である。日本の廃業率は4%を下回る水準で推移している。欧米諸国ではドイツでも7%前後、英国においては11%程度で推移している。
統計の方法が異なるため、単純な比較はできないが、開業率及び廃業率ともに、他の先進国に比べると相当程度低い水準で推移していることが分かる。(中小企業白書2017)
右が中小企業白書に掲載されているグラフなんですが、開業率・廃業率が低いことと起業者が少ないというわけではありません。
日本には経営者が約420万者いるので、直近の開業率5.6%とは約23万者の起業家が1年間に誕生したということになります。廃業率が3.5%ですから、こちらは約15万者です。
日本の生産人口(15歳から65歳)が7500万人ですから、結構な割合です。
開廃業率でなく、開廃業数で測ると、分母の違いが見えてきます。先進国でもルノーの例でもわかるように国が関与する大企業が優勢なフランスでは経営者の数が極端に少なくて、14万者ほどです。13%の開業率と言っても2万者ほどで、日本の1/10にも満たないです。
アメリカは570万者が分母で、日本より1.35倍。開業率9.3%を掛けると、年間の開業数は53万者で日本の2.3倍と多いです。しかし、アメリカは人口が多い国で、生産年齢人口は日本の2.6倍です。
ドイツは確かに日本より開廃業率が少し高いです。
イギリスは開業率14.6%で経営者の数も520万者もあって、突出しています。しかし、中小企業の平均従業員数が3人ですから、雇用を伴わないフリーランスの起業家が多いようです。英語という国際語の強みと、大英帝国の威光があるからだと思います。
結局のところ起業は廃業というのは、基準が曖昧です。統計として国際比較することは不可能だというのが結論です。何となくイメージに流されてはいけません。
そもそも、開業や廃業が多いことが優れているというわけでもないですよね。長寿企業が数多くあることが日本の誇りでもあります。