粉じん・有機溶剤・鉛・悪臭などを取り扱う業務では換気をすることが必要です。
環境改善のための換気技術には、「局所排気」「プッシュプル換気」「全体換気(希釈換気)」の3つがあります。どの換気技術を採用した場合でも、大切なのは有害物に暴露する作業者の位置なのですが、設備を整えたことに安心してしまって、管理者が十分に気に掛けないケースがあります。
右の図はプッシュプル換気の例です。汚染物質の拡散を防止するには最も適切な換気方法です。
絵で見れば当たり前に理解できるのですが、作業者の位置は汚染の発散源に対して風上側であることが必要です。
発散源が顔より低い位置にあって、その高さでプッシュプル換気をする場合もありますが、そのときは作業者も風の流れを乱さない側に居なければなりません。
しかし、風の流れが矢印で見えているわけでもないですし、体感できるほどの風速がない場合がほとんどです。さらに、発散源からの汚染物質が目に見えないことのほうが多いので、作業者が風下側に入って作業することが日常的に起こりがちです。
局所換気の場合は排気フード側に作業者が入ることはあまり考えにくいでしょうが、全体換気(希釈換気)の場合でも、風の流れはありますから、作業者は発散源より風上にいなければなりません。
そんなこと当たり前と思うのですが、管理者がきちんと指摘しないと守られていないことがあります。仕事を急ぐあまり近道作業になりがちです。管理者の側も設備を整えたから大丈夫だと過信することもしばしばです。
作業環境管理においては、本質をつかんで安全を担保しなければなりません。これらの汚染物質による健康障害はすぐには発生しないで、長い年月を経て現れます。
管理者の責任は設備や仕組みを整えることではなく、作業者の実態を毎日現場で確認して、気がついたことを直ちに指摘することです。