健康管理手帳にo-トルイジンが追加された

化学物質(有機溶剤)の長期暴露による癌のリスクに関する情報が増えている印象です。

 

健康管理手帳というのは、将来において癌など重篤な障害になる可能性がある業務に従事していた方が離職した際に交付されるものです。離職後も年に2回の健康診断を無料で受診するなど、フォローされます。有名なのは、肺癌などのリスクが高いアスベスト(石綿)、塵肺を引き起こす粉塵作業などです。

 

オルトトルイジン
オルトトルイジン

oートルイジンのリスクが広く認知されたのは、3年前のことです。福井県の有機顔料の中間体を製造する工場で働いていた人から7人もが膀胱癌を発症したのです。膀胱癌そのものが比較的珍しい癌ですから、大変なことだとわかります。

 

従業員に防御措置を講じないで取り扱いをさせていた会社側に責任があるのですが、o-トルイジンに発癌性があること自体が知られていなかったという事情もあります。

今回、厚労省が調査したところ、全国のかなりの工場でも同様にo-トルイジンを含む溶剤による暴露が確認されたということで、健康管理手帳制度の対象物質になりました。

 

昨年暮れにはウレタン樹脂の硬化剤に使われる「MOCA(モカ)」(3,3-ジクロロ-4,4-ジアミノジフェニルメタン)が原因とされる膀胱癌の発症が17人おり、厚労省が調査に入っているとニュースになりました。

作業環境測定機関には、厚労省から当面の処置としてMOCAの環境濃度測定をこれまでの日本の公定法(濾過捕集法)に加えて、米国法(硫酸含侵フィルター法)を併用するように指示が来ています。

 

発癌性というのは、ラットの実験だけでは人間に対するリスクの大きさがはっきりましせんし、長期間を経ないと発症しないという恐ろしさがあります。

また、原因となる物質に掛る業務を止めて何年もたって発症することもあります。今回のMOCAによる発症でも、業務から離れて8年経っているという場合もあります。

 

先ずは、企業は情報収集を怠らないことです。また、作業環境測定をきちんとおこなうこと。リスクがはっきりしない化学物質は、使用を控えること。不明な場合は、専門家に問い合わせること。など、徹底しましょう。