トマトにモーツアルトを聴かせると甘みが増すなんて、オカルト話みたいですか?
どうも野菜などの植物に音楽を聴かせると生育に差が出るというのは本当のようです。もちろん、植物には耳に当たる器官は無いので、音そのものを聴いているのではありません。音は空気の振動ですから、その振動が植物の生育に影響を与えるのだそうです。
実際に植物工場で野菜に音楽を聴かせることで生育を改善した施設があるとのこと。
先に書いたように、実際は音楽そのものの効果ではなく、音による振動が影響しています。
人間が音として認識できるのは、20Hz~20000Hzくらいの振動です。但し、これは若い人です。
高齢者になると、60Hz~7000Hzくらいが可聴域になって、特に高音(周波数の高い方)は聞こえずらくなるのはご存知の通りです。
いろいろな方が実験をして、植物に影響があるのは、20~100Hzくらいの低音というか、周波数の小さい(波長の短い)振動だということがわかっています。まぁ、低音のほうが遠くまで届くし、長く残るということもあるのかなと思います。
植物に振動のような何らかの物理的ストレスを与えた場合には、縦方向の成長が抑制されて、横方向の成長が促進されることは、かなり昔から知られていました。
これを特定の周波数20~100Hzにした場合には、発芽が促進されたり、根の伸びがよくなることがわかっています。これらの原因は確かにはわかってはいないのですが、振動によってエチレンのような成長促進物質の生成が促進されるといったことが言われています。
植物工場ビジネスを成功するには、音の勉強もしなければならないようです。
ただ、これには前段があります。実は植物工場というのは、そもそもが騒々しいのです。
温度、湿度、二酸化炭素濃度を制御するために空調をおこなっていますから、この換気音がかなり大きいです。さらに、光合成を促進するには葉の裏面にある気孔に効率よく呼吸できるようにサーキュレーターで風を送りますから、この風切音もあります。
さらに、養液はポンプで循環しますが、これは断続的に動きますので、水流音もありますし、ポンプの駆動音もそれなりの大音量です。
つまり、音楽を聴かせて植物の成長を促すといっても、これらの背景音をどう評価するのかという課題があります。
こうなると、なかなかやっかいな問題です。音や振動の専門家にお知恵を拝借しなければなりません。しかし、日本では音や振動の専門家というのは意外に少ないのです。
統計の専門家が減っているというのと、ちょっと似た状況です。環境中の音や振動による課題が少なくなったことで、取り組む人が減っています。
若い人に、音や振動に興味を持ってもらえるような取り組みも必要です。