日本産業革新投資機構(JIC)の民間取締役全員が辞任をしたというニュースについてです。
まぁ、そもそも論として国がファンドをつくって、税金を使って投資をおこない利益を上げるということが必要なのか?あるいは善なのか?という疑問があります。ましてや、そこに民間の優秀なファンドマネージャーを高額報酬で招いて運用を任せるとは何だろうか?
元々、産業革新機構という官製ファンドがありました。
このファンドのトップは、会長が高額報酬をごまかしていたという疑いで身柄拘束されている日産自動車の元COOで、現在も取締役である志賀俊之氏です。
今年9月に、新たに日本産業革新投資機構(JIC)を設立して、産業革新機構はINCJと名前を変えてJICの子会社となることになりました。新たな投資はJICがおこない、INCJは既存の投資案件からの回収を主におこなうということでした。
(旧)産業革新機構は2009年設立で運用期間15年とされており、2018年度末までの支援実績が1兆0500億円ほどです。
内訳は、最も割合が大きいのが事業再編の5400億円で、ルネサスエレクトロニクスやジャパンディスプレイに1000億円単位の支援をおこなっています。この事業再編が最も重要な役割であることは確かですし、もっともっとやりたかったようです。
一方で、2300億円ほどがベンチャー投資になっていて、この点は官製ファンドとしては少し評価できます。大学発ベンチャーなど創造的な技術力を持つ事業者にとっては、頼もしい存在です。宇宙ゴミの除去をビジネスにする、九州で人工衛星ビジネスを興す、藻を食用として使う、などは民間ファンドだけでは難しいかも知れません。
残る2700億円は海外への投資ですが、注目されるのはオーストラリア・ポルトガル・チリの水道事業会社の買収に参加していることです。最初のオーストラリアは2010年のことですが、民間水道事業会社のノウハウを日本企業が習得する道筋になったようです。今国会での、日本の水道事業の一部民間開放へつながりました。
(旧)産業革新機構の活動とは別に、JICは2兆円といわれる豊富な資金(元は税金です)を積極的に運用して利益を上げるということで設立されました。民間から優秀なファンドマネージャーを高額な報酬で招聘して、利益は国民に還元されるということだと思います。
民間ファンドでしたら、ファンド運用者の報酬は実績次第で高額になります。これは、実績を上げれば出資する額が増えることから、間接的ですがファンドの出資者が報酬を決めているということと同じです。儲けてくれるから、もっと出しますということです。
JICは官製ファンドですが、出資者は経済産業省ではなく、税金であり国民です。国民が納得しないような報酬は、まずいです。結果的に辞任されたことはよかったと思います。
(旧)産業革新機構の投資案件や資産は、INCJに引き継がれているのでこれまで通りの事業を継続するということです。