官能検査の品質管理は難しい

人の五感での感覚で検査をおこなって合否を判定するのが官能検査です。

 

検査とは、試験をして・判定基準と比較して・判定を下す、という3つの段階があります。重さや長さなどの計量値、キズの数や欠点数などの計数値は、判定基準との比較が容易ですが、優劣や序列などの官能値での判定は難しいものです。

 

臭気判定士(環境省)
臭気判定士(環境省)

環境の分野では、臭気判定士という国家資格があります。その名の通り、臭いやかおりを判定する専門家です。資格取得者が累計で4000人強しかいませんので、実際に活躍している人はもっと少ない、レアな資格です。

 

官能検査といっても、臭気判定のようにきっちりしていて国が管理しているものはあまり問題は起こりません。しかし、一般の企業でおこなう検査では官能試験の品質管理はやっかいです。

 

官能検査では限度見本をつくるのが一般的です。これ以上(以下)であれば不合格になるという見本と実際のサンプルを比較して判定するわけです。一般に判定の見方は複数あるので、限度見本を階級分けしていくつか使うようになります。こうして合格と不合格の間にあるグレーゾーンを減らす努力をします。

しかし、検査員が判定に悩むグレーゾーンが完全になくなることはありません。

 

結局のところは、迷ったら不合格にする(クレームのリスクは減るが、コストアップになって会社の利益は減る)のか、迷ったら合格にするのか、会社あるいは部門の考え方によることになります。

ところが、この考え方も固定されるわけではありません。例えば、実際に顧客からクレームが入ったとか、同業他社が品質問題を起こしたとか、という場合は迷ったら不合格という方向に流れるかも知れません。業績を上げるように上司から強く言われると、逆になるかも知れません。どこまでいっても、100点が取れない難しい問題です。