環境サービスへの支払い:PESという考え方

山口県の人口減少率は47都道府県中8位、高齢化率は同じく4位です。

 

日本では都市圏への人口集中が続いているので、官民事業の地方への移転を進めるべきだなど、このブログでも書いています。ところが、ある方から都市化にも問題がたくさんあるのだから、過疎化と言っても悪い事ばかりじゃないよ、と言われました。

 

森林(Wikipediaから借用)
森林(Wikipediaから借用)

まぁ、確かに一理あるので受け入れることにします。しかし、過疎化ならともかく、放置化・放棄化から無人化となるとことは重大です。既に、誰も管理していない家・建物や、田畑・山林がどんどん広がっています。きちんと管理しなければならないことはわかっていますが、経済的に成り立ちません。

 

特に荒れた森林とか、山口県の場合であれば放置された竹林などは、水害の規模を大きくするなど被害を大きくしています。こういう目に見える問題点だけでなく、森林や河川、海浜などの環境が破壊されることは人間の幸福に重要な影響があります、

 

そこで、考えたいのが環境サービスへの支払いです。PES(Payment for Environment Services)といいます。環境が社会に供給している顕在的・潜在的なサービスの価値を価格評価して実際に支払うことで、そのサービスを継続的に受けようという考え方です。

実際に人間の生活に使われるあらゆる製品もサービスもエネルギーも、突き詰めれば100%環境から得られているのです。

 

PESは1990年代に中米の小国コスタリカでおこなわれた先駆的な取り組みが大きな成果をあげたことで注目されました。

もともと熱帯雨林が拡がる森林国だったコスタリカですが、お金になるとわかると森林伐採が進みました。この森林破壊を止めて再生に向かわせたのが、国家財政森林基金というかたちでおこなわれたPESの取り組みです。大雑把に言えば、森林を保護すると1ha当たりでいくらというお金が農山村のコミュニティーに支払われます。30年間でコスタリカの森林面積は2倍に拡大して、多くの雇用を産みだしました。

 

現在コスタリカの熱帯雨林は、生物多様性の宝庫となっています。コスタリカのGDPの50%は観光産業でもたらされており、その中心が熱帯雨林への冒険旅行やエコツーリズムです。

さらに、世界の多くの製薬企業が新たな発見のためにこの森林を訪れています。ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智博士の研究に代表されるように、天然物化学は今後も人類の幸福に大きな貢献をし続けるでしょう。