ナレッジマネジメントが命を救う

ナレッジマネジメント(knowledge management)について、お話をする機会があります。

 

ナレッジマネジメントは直訳すれば知識経営ですが、いろいろな段階があります。

個人が持っている暗黙知を形式知に変換することによって、知識の共有化や明確化を図り、作業の効率化を進め、新しい発見を促すというのがわかりやすいですね。

 

大津波記念碑(平成27年版防災白書)
大津波記念碑(平成27年版防災白書)

暗黙知というのは、知っているが語るには難しい知識や”想い”のことです。形式知というのは、言葉や文章で表現できる知識で”ノウハウ”のことです。

ナレッジマネジメントを簡単に言えば、「想いを言葉に、言葉を形に、形をノウハウに」ということです。

 

俺の長年の努力を簡単に言葉になんかできない。教えてもらうのではなく、盗んで身につけろ!なんていう大時代的な人は少ないかも知れません。

俺の仕事は何も知らない若造に、言葉や文章で伝えられないというわけです。ましてや、マニュアルなんかにできるものじゃないと威張っている人も多いです。

 

ところで、お母さんが自分の子供に何かを教える姿を思い出してください。まだ、言葉もしゃべれない赤ちゃんにでも、お母さんは言葉を掛けて教えていますよね。

ご飯の食べ方、スプーンの持ち方、お水の飲みから、コップの握り方・・・。これが、暗黙知を形式知に変換するということです。

 

東日本大震災のときの大津波で、多くの人が助かった岩手県宮古市姉吉という地域には、写真の大津波記念碑がありました。昭和8年の昭和三陸地震の際の大津波の教訓を記しています。

「高き住居は子孫の和楽 想え惨禍の大津波 此処より下に家を建てるな」

 

この姉吉という集落は、明治29年の津波で生存者2名、昭和8年には生存者4名で、それぞれほぼ全滅しました。平成23年の東日本大震災では一人の犠牲者も出すことはありませんでした。これはナレッジマネジメントが命を救うという実例の一つです。

言い伝え、伝承の暗黙知だけではダメなんです。形式知にすることが大事なのです。