事業の利益=収入(売上高)-支出(コスト) であることは基本です。
利益を増やしていくには、競合他社との競争に打ち勝って、売上高を増やすことを目指すのが当然の道です。ところが、人口減少や顧客の撤退などによって、売上高が伸びない低成長期であれば、利益を増やす方法はコストを削減することです。
ここで注意が必要なことがあります。
「利益=売上高-コスト」という式には、時間の要素を入れなければならないのです。
利益とは、只今の利益なのか、中期的なあるいは長期的な利益なのかを考えてみます。
わかりやすい例で言えば、研究開発や設備保全などのコストがあります。今期の利益を最大化するためにこうしたコストを削減することは危険です。
研究開発コストを削減しても、今期の売上にはたちまちの影響は少ないでしょうから、確かに利益は増加します。
しかし、中長期的な視点では売上高の減少につながってしまって、利益を損なう危険があります。その研究開発費は、削減すべきコストなのか、将来に向けて残す(あるいは逆に増やす)べきコストなのかを検討します。
経営者は苦しくなると「コストの一律カット!」という号令をかけることがあります。一律カットという指示は、マネジメントを放棄したようなもので乱暴です。
ムリ・ムダ・ムラの3ムをカットするのは当然ですが、将来の利益の元手をカットするようなことは避けましょう。
もう一つの考え方として「コスト=単価×数量」です。
”品質や性能を無視すれば”、コストのカットには単価を下げるか数量を減らすかの二つの方法があります。というか、この二つしかないように思えます。
ムダなものを購入していた場合は数量を減らすことができます。工程の歩留まりを改善したり、ロスをみつけて購入数量を減らすことはコストダウンの王道です。
しかし、単価を下げることは一般には容易ではありません。汎用品であれば、単価調査をしたり相見積もりをとることで少しは下がるかも知れませんが、会社のコストの中ではごく一部に限られます。また、低成長下では無茶な値下げ交渉をすると、サプライヤーの側が逃げていくというリスクもあります。
これらを総合的にマネジメントすることが経営なんですが、そのときに思い出したいことがあります。先ほど、”品質や性能を無視すれば”と書いたのは逆説的です。
本当は、「コスト=(単価×数量)÷質」なのです
一般に、経営者やマネージャーの多くは、コストにおける品質や性能への理解が不足しています。より良いもの、性能が良くて、壊れにくくて長寿命で、使いやすいものを調達することがコスト削減になります。
また、仮にコストが人件費であるなら、単価(給料)を下げるとか、数量(人数)を減らすだけでなく、労働生産性を高めるというコスト削減もあるということです。