技能・技術の伝承には人間の発明を使う

ベテラン社員の退職で、技能・技術の伝承に苦労しているといわれる会社があります。

 

そこで、人(人間)とそれ以外の動物を分かったものは何だったかと考えます。あらゆる動物の中で、直立二足歩行が可能なのは人だけです。直立二足歩行ができることで、巨大な脳を支えることができ、解放された前脚(腕)で重いものが持て、投げることができます。

 

アウストラロピテクスの復元像(Wikipedia)
アウストラロピテクスの復元像(Wikipedia)

体重に対する脳の重量は人が最も大きいことが、人間の知能が高い理由です。

同様に重量物の運搬能力も人が最も大きいのです。牛や馬は重量物を運搬するなら鼻先で押して動かすしかありません。

更に、物を遠くに早く投げることができるという点でも、人間は圧倒的に優れています。そして、この前脚の開放は細かい作業を腕と指を使ってすることも可能にしました。

 

人は、脳と前脚の開放によって、「道具」を使うこと、作ることができるようになり、それによって高度な「技術」を生み、更にそれを次代に「伝承」することによって、「文明」としました。

 

その人間がおこなった発明が「文字」です。文字によって、伝承は記憶から記録になったのです。

もちろん、いきなり「文字」が出来たのではなく、最初は、象形の「記号(シンボル)」が使われました。今から、9000年くらい前のことだと言われています。

 

徐々に「文字」らしくなり「正字(orthography)」となるのは6000~7000年前のことです。人の歴史で考えれば、ごく最近のことですね。

次に、「文字」が「本」になるのですが、メソポタミアの粘土板が5500年くらい前です。エジプトのパピルスや中国の竹簡などを経て、紙が発明されるのが2000年ちょっと前のことです。グーテンベルグの活版印刷の発明は600年くらい前になります。

 

直立二足歩行するようになった時点から数えると、人間の歴史は400万年のもなるそうです。(諸説あります) この長い長い歴のなかで、人間の文明が大きく発達したのは「文字」の発明以降の1万年足らずの間です。そして、これ以降の発達カーブは急速に立ち上げっていて、それは今も続いています。

 

技術・技能の伝承には記憶ではなく「文字」を使わなければなりません。

もちろん、「文字」という概念も、この50年間で大きく変わっています。コンピューターなどテクノロジーの文字はやはり「記号」ですし、動画などの大量の情報を記録する文字は「0と1」です。技能・技術の伝承には、これらの人間の発明を使うということです。