全ての新築住宅に、改正省エネ基準が2020年に適合義務化されます。
日本の住宅の1/3は断熱が全く無い状態です。省エネ基準に適合している住宅は、全体の5%程度にとどまると言われています。産業分野での省エネが進む一方で、住宅部門のエネルギー消費が増えていることは大きな問題です。
建設物の省エネは、2000㎡以上の大型建設物で且つ非住宅についてのみ適合義務がありました。オフィスビルなどです。
300㎡以上の中規模の建物では、届出義務が一応はあったのですが、住宅については厳しい指摘はされていなかったのが実情です。300㎡未満の小規模の建物(大抵の住宅はこの範囲です)では、努力義務となってはいましたが、あまり考慮されていませんでした。
中規模の建物でも届出がなされていないケースもたくさんあります。工務店によっては、届出制度をよく知らないとか、面倒だから届出なんかしないというところも多数あるようです。
2020年から、改正省エネ基準が全ての新築の建物に適用になります。住宅も非住宅も同様に改正省エネ基準への適合が義務化されます。
実は改正省エネ基準のレベルについては多くの識者から緩すぎるという批判が出ています。確かに、欧米の基準に照らすと断熱性能もそれなりですし、気密性を評価しないなど、基準は厳しくありません。しかし、現状では住宅の省エネ性能についてほとんど関心がなかったわけですから、大きな変革ではあります。
まだまだ改正省エネ基準についての認知度は高くありませんが、これをきっかけにして住宅市場が大きく変わることが予想されます。
省エネ性能についてきちんと設計できない工務店は仕事ができなくなります。現時点で、改正省エネ基準に適合した建築をしていることを表明できていないなら、既に心配な状況です。
また、2020年以降の住宅販売への影響も大きいでしょう。省エネ基準に適合していない住宅の市場価値が大きく下落する可能性は高くなります。省エネリフォームを施してからでないと、適正価格での取引が成立しないかも知れません。
たしかに改正省エネ基準に適合させるということは、建築コストアップにつながります。国交省の試算では、120㎡の戸建住宅の建築費が2000万円とすれば+80万円(4%)増となります。一方で、水光熱費の低減が年間2.5万円期待できるという試算です。
回収期間が35年ですから、一見すると経済合理性が薄いように思います。しかし、省エネ基準に適合していることで、結露によるカビの発生が防止され、ヒートショックによる突然死リスクが減るなど、お金に計算し難い健康へのメリットがあります。
また、国や地方自治体では省エネ住宅に対する補助や助成、固定資産税の減免などの各種の優遇措置を実施していますから、ご相談ください。