日本体操協会での女子選手によるハラスメントの訴え、会社だったらどうしましょうか?
概要は、女子選手(18歳)に対して、男性コーチ(34歳)が日常的に暴力を振るっていた。しかし、女子選手(とその家族)はこれを容認している。一方で、その女子選手は組織の女性本部長(71歳)からの働きかけはハランスメントだと訴えている。
これに加えて、この女子選手のパフォーマンスが低下しているという事実がある。但し、その原因がどこにあるのかはよくわからない。
会社でこのような事例があった場合にどうするかと考えれば、多くの場合にはこの本部長と同じようにすると思います。若手女性社員と中堅男性社員と女性役員に当てはめればあきらかでしょう。
暴力は正しい行為ではありませんから、男性社員を懲戒処分にして女性社員から遠ざけます。女性社員に対して、他の部署への移動を促すのも自然でしょう。
ただ、ここでハランスメントという問題が出てきます。ハランスメントというのは、それほどでもない行為であってもその人が嫌だと思ったら嫌で、どんなに酷い仕打ちでも嫌と思わなかたら嫌ではないわけです。
私の知っている例でも、異性の社員からハラスメントを受けているという訴えがあって、どんな内容ですか?と訊いたら、顔をじっと見るとか、席の後ろを通るとか、嫌で嫌で堪らないといいいます。肉体的な接触はおろか、声を掛けてもいないので、対処のしようがありません。それでも仕方ないので、片方の部署を異動させて収めたのですが、いつかまた同じことが起きるかも知れません。
近年「セクシャルハラスメント」という言葉が、男女の力関係を大きく変えたことに異論を唱える人は少ないでしょう。そして、これからは「パワーハラスメント」という言葉が、組織内の力関係を変えるきっかけになるかも知れません。
会社で71歳の本部長に、18歳の社員に高圧的な態度で接してはいけないと注意することは、ナンセンスですよね。顔を見せるだけでも、声を聴かせるだけでも高圧的と感じる可能性は高いわけですから、仕事にはなりません。
好きか嫌いかよりも、(倫理的に、あるいは法的に)正しいか正しくないかという判断が優先されるほうが、本来の社会はうまくいくとは思います。ハラスメントという訴えも、正しい権利が守られるための闘いであれば納得はできるのですが、基盤にあるのが好悪の感情であるので難しいところです。
会社の経営において、ハラスメントというリスクは無視できません。しかも、最も大きなリスク要因は最高のパワーを持っている経営者本人あるいは上級経営層にあります。
一般に我々世代(つまり60歳前後の経営者世代)は、若い世代ほどドライで論理的な判断をするものと思っています。それは、我々自身が、より上の世代から「新人類」などと呼ばれて、ドライな態度を批判されていたことからの類推に過ぎません。つまり、世代が下がるに従って情緒よりも合理性を尊重するようになっていくものと錯覚しているのです。
しかし、これは誤解だと心に刻むことは大事です。若い世代ほど合理的でドライであるということは無いのです。このことには意識しておいて、注意して接することです。