品質管理に関する講習や指導をする際に訴えるのは、品質管理とは伝言ゲームだということ。
例えば、最初に顧客の要求品質があり、これを受けて自社の設計品質があり、それをもとに製造品質ができ、出荷する際には検査(保証)品質となり、消費者の使用品質へとつながります。このときの情報のやり取り=伝言ゲームの精度が品質管理(品質保証)の肝なんです。
ビジネスで最も大事なのが、この伝言ゲームにおいて、インプットとアウトプットのズレを小さくすることです。
このズレを最小限にとどめる活動が品質管理であり、品質保証です。逆に言えば、このズレを小さく維持していくことは極めて難しいのです。
例えば、顧客と当社、当社と消費者は仮に日本人同士であっても、同じ言語を使っているとは限りません。ビジネスの世界は、多くの場合で閉鎖的ですから、それぞれが思う言葉や仕様の定義が異なることはしばしばです。
また、社内の伝言ゲームでも、組織内のヒエラルキーであったり、企業文化であったり、情報の正確な伝達を阻害する要因がたくさんあります。
顧客の要求品質が最初から確固たるものでない場合も多くあります。
顧客様が何となくボヤっとしたイメージで発注を考えているときには、単純な伝言で相手の意図を想像するのではなく、双方向のコミュニケーションで品質を創造する必要もあります。
そもそも、はっきりした要求品質が明確であっても、それを相手に伝えるのは骨が折れる仕事ですし、自分自身にも相応のスキルが必要です。
そうしたことを、一つひとつ紐解いていき、伝言ゲームの差を埋めていくのです。
但し、伝言ゲームでは絶対確実というセオリーが存在しません。
極論言えば、社長が全社員を一堂に集めて話しても、10人いれば10通り、1000人だったら1000通りの受け止め方があります。
仮に紙に書いて渡したらどうでしょうか? ISOの方針なんかをカードにして渡している会社は多いでしょうが、それだけで伝わってはいないでしょう。伝言ゲームは一度で終わらせず、繰り返しの試行錯誤をすることが求められます。