今回の豪雨災害でため池の決壊が大きな脅威になっています。
瀬戸内海地域は降雨量が少ないことから、農業用水を確保するために多くのため池が作られています。昔は、地域で管理がきちんとできていたのですが、人口減少もあってメンテナンスが不十分になっています。豪雨で決壊すると大変なので改修工事が必要です。
ため池の改修などでは、大型のプレキャストコンクリートの活用がとても有効だと思うのですが、なかなか普及しません。
プレキャストコンクリートというのは、工場で製造されたコンクリート製品のことです。現地で型枠を組んでコンクリートを流し込んで固めるのではなく、工場でつくったコンクリート製品を現場に運んで設置します。
止水壁(擁壁)などは、できるだけ大型のものを使用すると効率がいいです。工場生産品ですから、品質は一定ですし、強度も高くて、工期も短くなると期待されます。
建設業の人手不足は深刻ですから、コンクリートのプレキャスト化は日本のインフラ工事では喫緊の課題です。
日本のプレキャスト化率(セメント使用量に占めるコンクリート製品の割合)は約13%に過ぎず、国際的にみて非常に低くなっています。ヨーロッパのプレキャスト比率は、デンマークやオランダでは約50%、ドイツやベルギーなどでは約25%と、日本より大幅に高いのです。
日本のインフラ工事では、役所の技官の方が施工仕様を決めるのですが、どうしても前例踏襲になりがちです。過去の工法と同じであれば、仮に失敗してもお咎めはないので挑戦することはありません。他の市町で実績がある工法を事業者が提案しても、「この町で実績があれば採用する」という返事が返ってきたりします。
ため池も土を持って堤をつくる方法が、相変わらず主流です。しかし、土といっても昔ほどよい土がないので、どうしても同じ工法だと強度が落ちます。
ようやくですが、i-constructionとして、建設現場の生産性革新が叫ばれています。先ず、第一段階としてプレキャスト化率20%くらいの数値目標を立ててもいいように思っています。