企業が儲かっているのに賃金に回さないので労働分配率が下がっている。という誤解です。
1994年度から2016年度までの長期推移を右のグラフにしてみました。
棒グラフが国民所得で、折れ線が労働分配率です。
労働分配率が下がっていると批判する人は、過去10年間の労働分配率だけをグラフにして示します。
確かに、2008年度に72.1%だった労働分配率は2015年度に67.5%となり、統計の直近2016年度でも68.9%です。
ここで注意が必要なのは国民所得の棒グラフです。2008年度は364兆円で前年2007年度より7.2%の急激な下落です。世界金融恐慌=リーマンショックの影響です。その後、2010年度に東日本大震災が起こるなど2012年度に掛けて国民所得は低迷を続けます。
この時代の労働分配率が高いのは、多くの企業が業績が悪化して、ときには赤字に転落していても従業員の雇用を守り賃金報酬を下げなかったということを表しています。
日本では、賃金報酬は上がるときも下がるときも時間差があります。
2013年度以降、アベノミクスの効果もあって日本経済は復興してきています。労働分配率も上昇に転じました。政府も賃上げの実施を経済界にプッシュしていますので、徐々に適正な水準まで上げっていくと思います。
性急なことを主張する人がいますが、日本企業は不況でも賃金を下げずに頑張ることを忘れないで欲しいです。
ただ、このグラフでよくわかるのは2001年度から2004年度にかけて労働分配率が大きく低下していることです。
2001年4月に小泉政権が誕生して、いわゆる小泉構造改革(竹中改革かな?)がおこなわれました。確かに国民所得は伸びてはいますが、非正規社員の増加など労働雇用に関しては問題ありでしょう。第二次安倍政権には、反面教師になっていますね。