連載第17回目です。今回は、2次試験についてです。
ちょっと、おさらい。
筆記問題は4問で各80分です。
4問の領域は「Ⅰ.組織・人事」「Ⅱ.販売・流通」「Ⅲ.生産・技術」「Ⅳ.財務・会計」です。
Ⅳの財務・会計は勉強すれば必ず点が取れるし、勉強しないと絶対に点が取れない科目です。
それ以外のⅠ~Ⅲは、得意・不得意があります。得意科目で稼いで、不得意科目で足切りに引っかからないことが大切です。
左に、昨年の二次試験の合格率を載せてみました。受験者の属性としては、民間企業勤務が63%と2/3を占めて圧倒的です。
(民間企業金融機関も含めると72%ですから、ほぼ3/4です。)
この民間企業の方の合格率が19%です。全体の合格率も19%です。
合格率が高い属性は、以下の順です。
①政府系金融機関(28.7%)、②経営コンサルタント勤務(28.4%)、③学生(25.4%)、④税理士・公認会計士(25.0%)です。
母数が十分に大きいわけではないので、正確かどうかはわかりませんが、「Ⅳ.財務・会計」に強そうな職種の人で、合格率が高そうに思えます。
これは推定なのですが、「Ⅳ.財務・会計」で80~90点を稼ぐことは、その道のプロには割と容易なので、Ⅰ~Ⅲをで各50点をキープできれば合格するということです。
となると、財務・会計を一生懸命に勉強することが合格への王道と言えそうです。
ところが、私たちのように、その道のプロでないものにとっては、財務・会計は結構やっかいです。ここで、どういう戦略を立てて試験に臨むかは、難しい判断ですね。
それでは、昨年の財務・会計の問題を見てみましょう。
基本パターンは、上のような設問です。
架空の企業があって、その事業内容を説明したうえで財務諸表などを提示して、解答を求めます。設問は、大問4に分かれて、全部で10問です。
試験時間は80分ですから、与件文を読むのに5分かかって、最後の検算とチェックに15分残そうと思うと、残り60分ですから1問6分ということになります。
それでは、第1問の設問1です。第1問には設問が2つあります。
設問1は、定型的な問題です。毎年、似たような経営分析に関する問題が出てきます。
経営分析の指標はたくさんあるのですが、全部を当てはめて計算してみて、最適なものを選ぶだけの時間はありません。(6分で3つの指標を選んで計算する必要があります。)
したがって、代表的なものに絞って考えるのがいいです。予め、自分が得意な指標を選んでパターン化しておいて、すぐに計算できるようにしておきましょう。
右がD社と同業他社のPLです。PLだけを使った経営指標があります。
PLから、D社の課題が「売上高総利益率」が低いことだとわかります。
D社は12.70%で、同業他社は20.22%ですから、7.52ポイント劣ります。
「売上高営業利益率」も、D社は5.62%で同業他社は7.45%と、D社が劣っているのですが、ここは「売上高総利益率」でなく営業利益率を採用する理由がありませんね。
その理由は、逆に、D社は「売上高対販売管理費比率」は低くて、同業他社に対して優れていることです。
D社は7.09%で、同業他社は12.73%ですから、5.64ポイント優ります。
D社はメーカーですから、売上原価率が高いのは弱みですが、販売管理費の比率が低いことは大きな強みです。この原因がどこにあるのかを発見することが大切です。
今度は、BSです。
経営指標にはBSとPLを組み合わせたものもあります。
経営の総合指標である「ROA:総資本当期純利益率」を確認してみます。
D社は0.89%で、同業他社は5.68%ですから、大きな差異があります。
BSだけの経営指標もあります。
「負債比率(負債/自己資本)」でみると、D社は573.47%で、同業他社は92.17%です。
会社の安全性には大きな開きがあります。鉄道とか電力とかの会社ならともかく、負債比率が500%を超えているのは、結構な問題がありそうです。
さて、ここで自己資本から非支配株主持分(180)を控除して計算していたことに、お気づきでしょうか?
子会社の純資産のうち、親会社の支配が及んでいない部分を非支配株主持分といいます。以前は少数株主持分と呼ばれていました。
自己資本には非支配株主持分を含めないということを知っていなければならないのですが、これがその道の人でないとピンときません。この問題では、経営指標は自分で選べるわけで、もし自信がなければ「負債比率」を選択しないことです。
予め、慣れた指標をいくつか完全にマスターしておきましょう。
ちなみにですが、以下の関係になります。
純資産の部=自己資本+非支配株主持分+新株予約権
自己資本=株主資本+その他の包括利益累計額
株主資本=資本金+資本剰余金+利益剰余金-自己株式
このあたりまでいくと、完全に覚えることは難しいと思います。覚える範囲を捨てることは難しいので、やはり確実にできるという範囲を確立させることでしょう。