石炭を蒸し焼きにしたものがコークスですが、はっきりした起源は16世紀の欧州です。
木材を蒸し焼きにしたら木炭です。
石炭を蒸し焼きにしたらコークスです。漢字だと骸炭と書きます。
さて、コークスの歴史ははっきりしません。
4世紀の中国で燃料としてのコークスを使用していたとか、11世紀には製鉄用に使用していたとか、という説があるようですが、文献としての証拠は見当たりません。
文献としてはっきりしているのは、16世紀のイギリスで石炭の臭いを消すためにコークスを製造しはじめたというのが古いようです。石炭を燃やすと硫黄の臭いが発生しますので、これを忌避したわけです。
コークスが最もよく使われたのが、ビールを醸造するときにモルトを焙煎する際の燃料だそうです。硫黄の臭いがするようなビールは飲みたくないですからね。
コークスの歴史にはダービー親子(子はダービーⅡ世)の存在が欠かせません。
ダービー(Ⅰ世)少年はモルトを粉砕する機械をつくる工場に見習工として入社しました。真面目で賢い少年は、そのとき機械の材料である鉄や青銅など金属材料の知識を習得するとともに、モルトの焙煎にコークスを使うことを知ります。
少しのお金を貯めた青年ダービーは、工場を辞めて自分で鋳物工場を興します。砂型鋳物の特許をとったりして鋳物工場の経営を安定させます。
ここでダービーは、満を持して製鉄事業に乗り出します。その際に、石炭をコークス化して燃料として用いて、鉄鉱石を熔解する高炉を成功させたのです。このとき、送風シリンダーも考案しています。
そして、子のダービーⅡ世が、それまで野焼法で製造していたコークスをコークス炉に転換します。製鉄は高炉燃料を木炭からコークスに変換することで、飛躍的な発展を遂げます。
ダービー親子が創った製鉄所がつくる鉄は、鍋釜から蒸気機関、鉄橋に至るまで幅広く使用され、18世紀の産業革命へつながっていきます。
製鉄業の発展のきっかけは、美味しいビールを飲みたいという気持ちだったわけです。