連載第13回目です。今回は、「運営管理」の2回目です。
毎年4月1日には「エイプリルフール」ネタを書いていたのですが、今日は真剣に書きますね。
運営管理は「生産管理」と「店舗・販売管理」の2つのカテゴリーに分かれています。前回は「店舗・販売管理」の問題を解説してみたので、今回は「生産管理」です。
昨年の試験問題から、あえて伝統的な話題について問うている設問を取り上げてみましょう。
「かんばん方式」をトヨタが開発して自社工場に導入したのは、昭和30年頃のことですから、半世紀以上も前のことです。私が、工場で働き始めたときでも、既に伝統的な手法だったように思います。
「かんばん方式」には、とかくの批判やデメリットの指摘もありましたが、これだけ長い間続けられているわけです。日本の製造業にはマッチした素晴らしい仕組みだと分かります。
生産管理方式には「プッシュ生産」と「プル生産」があります。
プッシュというのは、前工程が後工程をプッシュする意味ですが、各工程が生産計画に基づいてそれぞれ生産をおこなって、後工程に品物を送っていく方式です。まぁ、これがより伝統的で一般的なやり方と言えます。
私の場合は化学工場ですから、こちらのプッシュ方式です。各工程が「必要なときに・必要なものを・必要な量」つくるように計画を立てて管理します。
プルは、後工程が前工程からプルする意味で、必要な品物を必要な時期に、後工程が前工程に取りに行くという方式です。「JIT(just-in-time)方式」とか「かんばん方式」はプル生産方式の一つのやり方です。
プル生産方式の特徴は、後工程が引き取りに来ない限り前工程は生産を行わないということです。つまり、どこかの工程でトラブルがあれば、そこより前の工程は全て生産を止めることになりますから、過剰な仕掛品が発生しません。これは、大きなメリットです。
但し、各工程の生産がしばしば停止するような状況のなかで、品物の安定性や信頼性を保つことは困難でもあります。
さて、問題を見てみますと、ちょっとイジワルです。多分ですが、正答率はかなり低かったのではないでしょうか?
そもそも「かんばん」を仕事で実際に使っている受験生は少ないと思います。仮に、使っていても各社各様のルールがあるでしょうから、「仕掛けかんばん」「引取かんばん」という、必ずしも一般に固定した用語でないものを問題としてはどうかな?と思います。
とは言え、試験中にクレームもつけられないので解説です。
”ア.かんばんが工程間・職場間で循環する”は、明らかに正しいです。
”イ.かんばん方式を導入することで、平準化生産が達成される”は、実は微妙です。
プル生産方式は、需要に供給を合わせて生産をするので、平準化生産とは逆ですから、これが不適切ということになんでしょう。しかし、かんばん方式は平準化生産ができていることが前提で成り立っている方式ですし、導入によって(一定の時間がかかっても)平準化生産のレベルは上がっていくことになります。そういう意味では、あながち不適切というわけでもありません。
”ウ.仕掛けかんばんには・・・などが記載される”は、何を記載するのかは各工場で違うわけですから微妙ですが、”など”がついているので「最も不適切」とはとても言えませんね。とりあえず、正しいとしておきましょう。
”エ.引取かんばんの枚数で・・・調整することができる” は、正しいです。工場の製造スタッフとしては、引取かんばんの枚数を、最終製品の生産数を最大にする(=最終工程の稼働率を最大にする)ように、安全在庫量を設定して決めるのは腕の見せ所です。
と言うことで、ア・ウ・エは選べませんので、不承不承ですが「イ」を選びます。
確信は無かったのですが、出題者が正解を「イ」としているので、まぁ仕方ありません。
運営管理の試験についてまとめると、出題範囲が広いので、あまり深く考えないほうが良いだろうと思います。根掘り葉掘り勉強すると、ストレスが溜まります。
また、毎年同じテーマで出題されることが多いので、過去問をよく解いておくことが効果的な勉強法のような気がします。
今回紹介した問題は、前年の設問3と全く同じテーマの問題でした。
「プル生産方式」を「かんばん方式」に置き換えてみてください。
但し、今年の設問9との大きな違いは、この問題はイジワルではなく、素直だということです。恐らくですが、今年と比べて正答率はかなり高かったのではないか?と思います。
最後に、毎年同じテーマの問題が出るわけもなく、3年前・4年前と遡ってみてみましたが、このテーマの問題は出ていません。
ということは、2年続けて出題されたので生産管理方式については今年は出題されない?なんて、安易に考えるのも拙いでしょうね。まぁ、「運営管理」は広く浅くです。