【日曜連載】中小企業診断士試験合格への道標⑫

連載第12回目です。今回は、1次試験の「企業経営理論」の2回目です。

 

ビジネス資格に兆戦
ビジネス資格に兆戦

前回書いたように、企業経営理論は3つのカテゴリーからできています。「経営戦略論」「組織論」「マーケティング」です。この3分野から等分に出題されます。(ただし、100÷3なので、どれか1分野が34点で残りが33点の配点になる。)

 

前回は「経営戦略論」の問題を取り上げたので。今日は「組織論」にします。

昨今は、中小企業でも働き方改革が大きなテーマですから、そういう観点からの問題が出るかも知れませんね。

 

さて、昨年の試験問題から第14問を見てみます。13問までが「経営戦略論」でした。 



さて、何にしても最初に用語の定義です。○をつけるとすれば・・

「機能部門化」「指揮命令系統」「職務の専門化」「公式化」「集権化と分権化」の5つですね。これに「管理範囲」を加えると、”組織構造の6要素”となります。

 

「組織論」でいうところの経営組織とは、分業&調整の仕組みを定めたもののことです。

会社にはいろいろな仕事があります。一定以上の企業規模では、仕事を分業(つまり分担)することが必要になります。資材購買・総務経理・製造・営業販売などに従業員の担当を分けるということです。この分けた担当のことを「職務」と言います。

 

分け方にもいろいろあって、とても細かく分けることもあります。例えば、機械を組み立てる製造の仕事を、A部品の組付・B部品の組付・溶接・外装取付・塗装・・・などとする場合です。これを「職務の専門化」といいます。

以前は、職務を専門化するほど作業効率が高まると考えて、広く採用されていました。現在では、同じ作業を続けるとモチベーションが上がりにくく、ストレスが溜まりやすいので、必ずしも効率が上がらないことが分かって、見直しされています。

 

次に、同じ職務(機能)の人をグループにするのが「部門化」です。資材部・総務部・製造部・営業部とかです。部門にして、目的を共有して助け合いながら仕事をするというわけです。部門化されるグループには、商品毎とか地域毎とかもあります。

 

組織では個人の立場によって責任と権限が異なります。個人が持っている権限は部下や同席に預けることはできますが、責任は譲ることはできません。そこで、「指揮命令系統」というものがあります。

しかし、近年では部門を横断するような業務が増えて、上司が複数存在するような場合も増えてきて、この概念は薄らいでいます。情報ネットワークの発達は、マトリックス組織の情報共有に役に立ちますが、指揮命令系統の重要性を否認するものではありません。

 

「公式化」とは、命令や指示・手続きなどがルールとして文書化されて(これを「標準化」といいます)、関係者に公開されていることです。近年は、「職務の専門化」が薄まっているので、「公式化」・標準化は重要性を増しています。

 

「集権化と分権化」の最適なレベルは組織によって異なります。

極端ですが、全ての意思決定を社長一人がおこなう「集権化」は、現場の責任と権限が薄くなります。結果として、現場の情報が社長に十分上がらないとか、現場のモチベーションが下がるとかの弊害が表れます。また、社長一人で悩むので、意思決定が遅れるのが普通です。

もちろん、一定より規模が大きくなれば、全ての意思決定を社長にお伺い立てるわけにはいきませんので、「分権化」の度合いが高くなります。

 

ということで、問題の解答は、”エ”です。

 

受験される方は、大抵は何かの組織で働いているか、その経験があると思います。人事労務部門で働いていなかったとしても、組織論には興味はあるのではないでしょうか?また、居酒屋で愚痴を言い合ったこともあるかも知れません。

 

「企業経営理論」は、先週の「財務・会計」と違って、勉強したからといって100点満点を狙える科目ではないと思います。勉強すれば最初のうちは知識が増えて、得点も上がりますが、そのうちにサチってきます。そのときは、あまり無理をしないで、興味本位で学ぶ範囲を決めてもいいと思います。

 

※”サチる” は普通に使っていたのですが、先日、ある人から何のことか?と聞かれてしまいました。saturation(飽和)するという意味で、技術系の人の俗語です。